ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜
 驚いて振り向くと、そこには息を切らした愁さんがいた。
 どうして? 仕事だったはずじゃ?
 愁さんは、創ちゃんににっこりと笑顔を向ける。
 
「初めまして、栗本愁です。天音さんとお付き合いさせていただいてます」

(えっ、言っちゃうんだ!?)

 創ちゃんには、再会した時に愁さんと付き合っていることは言ったから問題はないけど、なんだか恥ずかしい。

「は、初めまして……一越創太です……。天音(・・)とは幼馴染でして」

 戸惑いながら名乗る創ちゃん。目の前の愁さんに気圧されているのが分かる。
 でも、なぜか名前を強調されたような……?

「ああー、なるほど。幼馴染(・・・)ですか」

 にっこりと笑いながら言う愁さん。
 心なしか、「幼馴染」を強調したような……?

(……あれ? あれれー?)

 初対面のはずなのに、なんだろう、この二人の微妙な空気。
 なんだかすごくギクシャクしてる気がする……。

 その後、創ちゃんは気まずそうに「じゃあ、またな」とだけ言い残し、足早にその場を去っていった。残された私は、愁さんを見上げながら思った。
 ……これって、なんだかすごくややこしい展開になってない?
 
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