ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜
「愁さん、お仕事はどうしたんですか?」
私の問いかけに、愁さんは少し得意げな顔をして答えた。
「自分の仕事は速攻片付けてきた! あとは他のスタッフに任せたよ」
……あまりにも堂々としているその言葉に、思わず開いた口が塞がらなくなる。
「愁さん、お仕事はちゃんとしなきゃだめですよ」
少し怒り気味に言うと、愁さんは慌てたように手を合わせる。
「そうだね、ごめん。でも、君が他の男と会うなんて、居ても立ってもいられなくて」
他の男……?
もしかして、創ちゃんのこと?
「愁さんがお仕事に集中できないなら……。私、これから愁さんのことを誘いにくくなっちゃいます……」
しゅんと項垂れる私に、愁さんは明らかに焦った顔をして、慌てて言葉を継いだ。
「わかった! これからはちゃんと仕事します! だから今日だけは許して……ね?」
申し訳なさそうな顔をして、そんな風にお願いされると、つい許してしまう。
「わかりました。今日だけですよ」
小さくため息をつきながらも、私は折れることにした。
「あれ? でも……私、男の人と会うなんて言いましたっけ?」
私、創ちゃんが男だなんて、愁さんに一言も言った覚えがない。
今日の予定を愁さんに伝えたときも、確か「古い友人」って言っただけだったはず。
すると、愁さんはちょっと得意げな笑みを浮かべた。
「イベントのホームページを見たら、土曜日にガイドする人の名前が載ってたから」
すごい、愁さんが探偵みたいだ。
でも、一歩間違えたらストーカーになりかねない。
そんな私の疑問をよそに、愁さんが急に話題を変えた。
「天音さん、今度、僕の父に会ってほしいんだ」
「えっ、愁さんのお父さんに?」
「うん、そろそろ課題のことも話さないといけないしね。天音さんが一緒にいてくれると心強い」
愁さんは真剣な表情で語る。
愁さんのお父さんに会うのは緊張するけど、課題のこととなれば断る理由を見つけられない。
「……わかりました。日程が決まったら教えてください」
「ありがとう。今日はもう帰るの?」
「はい。イベントはもう見終わりましたので」
「じゃあ……途中まで一緒に帰る?」
そう言って、愁さんは手を差し出してきた。
「えっ……?」
その手を無下にすることができず、私はドキドキしながらそっと愁さんの手を取った。
愁さんの大きな手は、パティシエらしく指の付け根にタコができているようで、一部分がゴツゴツしている。
だけど私は、この手に刻まれた努力の証が、どこか誇らしく思えた。
私の問いかけに、愁さんは少し得意げな顔をして答えた。
「自分の仕事は速攻片付けてきた! あとは他のスタッフに任せたよ」
……あまりにも堂々としているその言葉に、思わず開いた口が塞がらなくなる。
「愁さん、お仕事はちゃんとしなきゃだめですよ」
少し怒り気味に言うと、愁さんは慌てたように手を合わせる。
「そうだね、ごめん。でも、君が他の男と会うなんて、居ても立ってもいられなくて」
他の男……?
もしかして、創ちゃんのこと?
「愁さんがお仕事に集中できないなら……。私、これから愁さんのことを誘いにくくなっちゃいます……」
しゅんと項垂れる私に、愁さんは明らかに焦った顔をして、慌てて言葉を継いだ。
「わかった! これからはちゃんと仕事します! だから今日だけは許して……ね?」
申し訳なさそうな顔をして、そんな風にお願いされると、つい許してしまう。
「わかりました。今日だけですよ」
小さくため息をつきながらも、私は折れることにした。
「あれ? でも……私、男の人と会うなんて言いましたっけ?」
私、創ちゃんが男だなんて、愁さんに一言も言った覚えがない。
今日の予定を愁さんに伝えたときも、確か「古い友人」って言っただけだったはず。
すると、愁さんはちょっと得意げな笑みを浮かべた。
「イベントのホームページを見たら、土曜日にガイドする人の名前が載ってたから」
すごい、愁さんが探偵みたいだ。
でも、一歩間違えたらストーカーになりかねない。
そんな私の疑問をよそに、愁さんが急に話題を変えた。
「天音さん、今度、僕の父に会ってほしいんだ」
「えっ、愁さんのお父さんに?」
「うん、そろそろ課題のことも話さないといけないしね。天音さんが一緒にいてくれると心強い」
愁さんは真剣な表情で語る。
愁さんのお父さんに会うのは緊張するけど、課題のこととなれば断る理由を見つけられない。
「……わかりました。日程が決まったら教えてください」
「ありがとう。今日はもう帰るの?」
「はい。イベントはもう見終わりましたので」
「じゃあ……途中まで一緒に帰る?」
そう言って、愁さんは手を差し出してきた。
「えっ……?」
その手を無下にすることができず、私はドキドキしながらそっと愁さんの手を取った。
愁さんの大きな手は、パティシエらしく指の付け根にタコができているようで、一部分がゴツゴツしている。
だけど私は、この手に刻まれた努力の証が、どこか誇らしく思えた。