あのコワモテ先輩が距離感バグな件について
始まり

お節介な先輩

「うっ……んぬぬぬ……」

 春風が吹き込む五月の放課後、学校の西校舎にある古紙の匂いが漂う図書室の本棚の前。
 届きそうで届かない目的の本を前に背伸びをして何とか取ろうと踏ん張る声を上げていたのは佐藤 優月(さとう ゆづき)。この学校の二年生で図書委員の仕事の一つとして本の整理整頓を行っていたが現状に躓いていると言った様子だ。

「ん〜〜〜〜!!」

 再び目いっぱい背伸びをしてみても、それに合わせて踏ん張ってみても状況は全く変わらない。
 図書室の奥の方にある準備室に脚立はある事は知ってるのだが、少し距離もあると言う点も含めてそれを取りに行く事を惜しんでしまったらしい。

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