あのコワモテ先輩が距離感バグな件について
「……うんしょっと」

 脚立は思いの外そこまで重くない事に安堵した。委員会で最近教頭先生が買い換えたと言っていた事を思い出す。きっと軽い素材で出来た脚立なんだろう。そう思いながら先程届かなかった目的の本がある本棚の下へフラフラと覚束ない足取りで向かった。

「おっとっと……うう……」

 そうした様子で漸く辿り着き脚立をその本棚の前に置くと徐にそれを登る。

(はぁ……やれやれ、意地を張らないで最初からこうしてたら早かったよね……)

 昔から自分の背の低さがコンプレックスだった優月は自分の意地の悪さも自覚している。でも他人に対して喋りかける事も出来ないでいるのに、とまたため息が出そうになる。
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