新海に咲く愛
看護師によって新生児室から運ばれてきた赤ちゃんと初めて対面した海斗。

その小さな命を見ると、不思議と胸が温かくなる感覚を覚えた。

「お父さんですよ。」

看護師が微笑みながら赤ちゃんを抱かせると、海斗はぎこちなく腕で支えながら小さな顔を見つめた。

「お前……奈緒そっくりだな。」

そう呟きながら目元の涙を拭う。赤ちゃんは穏やかな表情で眠っており、その姿を見るだけで少しだけ心が救われる気がした。

「奈緒にも早く見せてやりたいよ……だからさ、お前も一緒に待とうな。」

そう語りかけながら、小さな命を守る決意を新たにした。


それから数日間、奈緒の意識は戻らず、病室には静寂だけが漂っていた。毎日病室へ通い詰める海斗。  

赤ちゃんのお世話も慣れないながら必死にこなしつつ、それでも時間があれば奈緒のそばへ行き、話しかけ続けた。

「今日な、赤ちゃん初めてミルク飲んだんだよ。すげぇ顔して飲むんだぜ。」

「早く目覚ましてさ、一緒に抱っこしてやろうぜ。」

「俺一人じゃ無理なんだよ……だから頼むから戻ってきてくれよ。」

そんな日々が続く中でも、奈緒から返事はなく、その姿を見るたびに胸が締め付けられる思いだった。
そして夜になると、一人になった病室で泣き崩れることもあった。




それから数日間、奈緒は眠り続けたままだった。
医師たちからも「回復には時間がかかる可能性がある」という言葉を聞かされていたが、その「時間」がどれほど長いものなのか、誰にもわからなかった。

海斗は毎日病室へ通い詰めていた。
赤ちゃんのお世話も慣れないながら必死にこなしつつ、それでも時間があれば奈緒のそばへ行き、彼女に語りかけ続けた。

「なあ、奈緒。お前、どんだけ俺に心配かけるつもりなんだよ。」

ベッドの横に座り込み、冷たい彼女の手を握りながら話しかける海斗。
その声は震えながらも優しく、どこか必死だった。

「咲、めちゃくちゃ可愛いぞ。お前そっくりだよ。髪の毛とか、お前みたいに柔らかくてさ……」

言葉を紡ぎながらも、奈緒から返事がないことに胸が締め付けられる。

「俺さ……奈緒と咲と一緒に生きていくって決めたんだよ。だからさ……頼むから戻ってきてくれよ……」

その声は次第に涙混じりになり、海斗は顔を伏せたまま嗚咽を漏らした。
これまで強くあろうとしてきた彼だったが、この瞬間ばかりはどうしようもなく弱気になっていた。

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