甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
午後の仕事が始まり暫くしてから、眠気覚ましにコーヒーでも飲もうと思い、マグカップ片手に席を立つ。


給湯室へ向かう際、隣の課を一瞥する。

少し離れたところに向井くんの背中が見えたけれど、すぐに視線を逸らした。


期待したって良いことはないのに、意識してしまう自分に嫌気が差す。


何もなかったように振る舞うのが、一番良い。

あの夜のことは、お互いなかったことにすればいい。


頭では何度もそう思うのに、心と身体は裏腹だ。

恋人同士のように甘く紡がれた時間をなかったことにしたくないと思うのは、愛されていない女の(さが)だろうか。
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