甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
「もう、大丈夫だよ」

「跡に残ったら困る」


ずっと手を添えていてくれる必要はないのに、離れることのない向井くんの手。

暫くしてから水を止め、スーツのポケットから取り出したハンカチで私の手を拭いてくれるところまで全てが完璧すぎて狡い。


「気を付けろよ」

「ごめんなさい」


向井くんの手から、自分の手を引く。

まだ熱の残る指先を、反対の手で覆う。


こんなことでいちいち反応するなんて、情けない。
< 21 / 62 >

この作品をシェア

pagetop