甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
「向井くんもコーヒー休憩?」


沈黙が気まずくて、シンクに落としたマグカップを濯ぎながら私から口を開くと、私の身体を後ろから囲うように向井くんの両手がシンクに伸びた。


「山口が向かうの見えたから」


背後に感じる体温のせいで、頭が上手く回らない。

私だけではなく、彼も私を少しは意識していたのかもしれないと思うと心が揺らぐ。


「ここ職場だよ」

「ん、知ってる」


動揺しない向井くんはやっぱり慣れていて、数多の女の中にうちの職場の人もいるのかもしれないと思うと、やりきれない気持ちに襲われた。
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