甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
自動ドアを潜る前に鞄の中から折りたたみ傘を取り出した瞬間、後ろから不意に誰かに肩を叩かれて身体が大袈裟に反応した。


「ごめん、驚かせた?」

「なんだ、向井くんか」

「誰だと思ったんだよ」


気まずいはずなのに、なぜか振り返った先にいたのが向井くんとわかって胸を撫で下ろす。


「なぁ」

「なに」

「傘、入れて」


自動ドアの先を確認してそうお願いしてきた向井くんを無碍にもできず、小さな折りたたみ傘の中に二人で身体を寄せ合う羽目になった。
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