甘い微熱ーセフレから始まる恋ー
「持つ」


私より頭一つ分以上背の高い向井くんが、私の持っていた傘に手を伸ばす。

私の方へ傘を傾けてくれる向井くんの右肩が濡れているのを見て、少しだけ向井くん側に身体を寄せた。


「あのさ、金曜日なんだけど…」


何か話さなきゃと思い、給湯室での会話をぶり返す。


身体を重なることが目的なら会わない、とはっきり言わなければいけない。

ズルズルと関係を続けたらいつか仕事に支障を及ぼす可能性もあるし、最後に傷付くのは大抵女側だと思うから切るなら早いに越したことはない。
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