どん底貧乏美女は夢をあきらめない
「でも、もうすぐ母や祖母から野菜や
干物も届くはずなのでそうしたら、
それであとひと月何とかなります。
肉はちょっと買えないですけどね」

そういって、カラカラ笑う美玖に

「ところで全財産はいくらなの?
あとひと月いくらで過ごそうと
思っているかにも、興味あるよ」

「ここに来る交通費を使ったから、
あと3500円切るくらいですかね。
なので明日からの交通費いただけると
とても助かります」

と俯いて小声で言う美玖に

「もちろん、交通費は支給するけど、
ひと月3500円って一回の夕食で
払う金額より少ないじゃないか。
ちょっと待ってて」

そう言うと、榊は席を外した。

戻ってくると

「これ、支度金だから、受け取っておいて
あまりたくさん渡しても、夢野さんは
気を遣うだろう」

そういって茶封筒を渡してくれた。

「本当に、大丈夫です。
今日、実家に早速電話しますから、
5万ほど送ってもらえば何とかなります」

美玖は茶封筒を受け取ろうとはしなかった。業を煮やした榊は

「受け取らないなら、採用はなしだ」

「そんなのひどいです」

泣きそうな顔で言う美玖に

「なら、ちゃんと受け取ってしっかりとした
暮らしをするんだ。当分の間はここに通って
もらうことになるから、ここのキッチンで
昼も作ればいいよ。ついでに僕の分も
作ってくれればうれしい」

「ありがとうございます。ではお言葉に
甘えてお借りします。
そしてお昼は明日から任せてください」

「うん、お願いするよ。僕の食生活も
ひどいもんだから手作りの料理が
食べられるのはうれしいよ。
それとお金は返さなくてもいいよ。
支度金だからね。お昼代もあるし
交通費もそこから出してね」

「はい、本当にありがとうございます」
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