どん底貧乏美女は夢をあきらめない
榊のお見合い話に内心どんよりと気分も落ちていく。

「行くわけないだろ。結婚したい女性がいて
今も一緒に住んでいると言ってやった。
親父は目を丸くして言葉もなかった。
母親はけらけら笑って大吾にそんな人が
いたなんてと言って喜んでたが…」

「そうなんですか、一緒に暮らしている
人がいるんですね」

しょんぼりとして、美玖は目を泳がせた。

「そんな訳あるか」

「ですよね」

ほっと安心した美玖は

「それでご両親は納得して
くれたんですか?」

「そんな簡単なものじゃないよ。
土曜日にでも彼女に会いに行くなん
て二人で息巻いてた」

「ええ~っ、どうするんですか?」

「だから夢野いや美玖、すぐに
俺の部屋に引っ越してきてくれ」

「はい。ええっ?どういうことですか?
意味不明、話が繋がらない」

「だから、結婚したい女性つまり同棲
しているのは、俺の部下で夢野美玖26歳
だと言ってしまった」

「ええ~っ」

今日何度目かわからない悲鳴を上げて、美玖は椅子から転げ落ちそうになった。

「な、なんで、そんな事言ったんですか?」

「他に思いつかなかった。こんなこと
頼めるのは美玖しかいない」

いつのまにか、美玖と呼び捨てにされている。

榊も困惑して気付いてもいないようだ。
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