どん底貧乏美女は夢をあきらめない
精いっぱい頑張ってきた会社だった。

でも移動はかなわなかった。

設計部や住宅事業部に移動になっていれば、虫唾が走る副社長の秘書としてではなく専門職として残れたはずだ。

美玖は周りからはクールビューテイとよく言われる。

切れ長の大きな目にすっと通った鼻筋、ちょっとぽってりぎみの唇が男心を誘うらしいが、黙っていればクールな美女らしい。

本当は口も悪い。

でもそれは心の中で呟くだけにしている。

スタイルがいいともよく言われるが、野菜中心の節約レシピのお陰?なのか、甘いものが大好きだけど、贅沢スイーツは月1と決めている。

お昼も必ずお弁当なので同僚とランチに行くなんてボーナスの出た時くらいのものだ。

食べることだけでなく、なるべく贅沢はしないと決めている。

美容院には極力いかない。

肩まで伸びた髪を自分で時々切っている。

前髪は自分で切るにはリスキーなのでサイドで止めている。髪留めだけは自分に贅沢を許して、ちょっとキラキラの物やかわいいリボンのついたものを買っている。

化粧品はプチプラのもので、髪と肌のケアーは子供の頃から椿油のみだ。

安いシャンプーリンスでも、何ならリンスインシャンプーでも椿油を塗った髪はいつもつやつや。

会社の秘書仲間にいつも褒められる。

黒く艶の良い髪。

顔にも体にも椿油一択なのに…
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