どん底貧乏美女は夢をあきらめない
館内も同様に木が多用されている。

プラレタリュームの中の壁も木が貼ってあって、森の中にいるような癒される空間になっている。

美玖の担当であった内装も、コンセプトがはっきりしているのでコーデイネートもやりやすかったが、ここでも但馬玲子の嫌味なダメ出しが毎回あって、チームの皆は美玖の提案に賛成してくれるのに、その人を見下した言い様に美玖はぶち切れ寸前までいった。

結局美玖の案が採用されるのに、ひとこと言わないと気が済まない但馬玲子のせいで会議の時間が押したり内装が間に合わない事態になってくると大吾が出てきて、場を収めてくれるのだ。

大吾が言うとおとなしく従うくせに美玖にはことごとく反発するのだ。

チームのメンバーは、後でこっそり”ほんとに申し訳ありません。皆は美玖さんのセンスを信頼していますから”と言ってくれるので、何とかちゃぶ台をひっくり返さずにここまで来たのだ。

その代わりというか、美玖はストレスでいつも胃薬が手放せなかったのだが、全ての打ち合わせが終わりもう但馬玲子と会わなくても済むと思ったら、すっきり胃炎も収まった。

でもこれもいい経験だと思うことにした。

嫌な施主はどこにでもいるのだから、ここを耐えなければこんな仕事はできない。

美玖の夢をかなえてくれた大吾に申し訳が立たないと思い、歯を食いしばってきた。

大吾の前では決して弱音を吐かなかった自分を褒めてあげたいと美玖は完成したホテルを感慨深く見つめていた。

マスコミにもオープン前から取り上げられて、お金を使わずに宣伝してもらえた。

オープンしてからもマスコミの取材は後を絶たず、最初に予定した広告宣伝費はマスコミの報道がひと段落したら、また大々的に広告を打てると広報も喜んでいる。

大吾はこのホテルのデザインで、エコ再生リモデル賞を取った。

ＫＡＩ空間デザイン事務所としては初の快挙でその知らせを受けた時スタッフは大歓声を上げて皆で抱き合って喜んだ。
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