どん底貧乏美女は夢をあきらめない
それから一週間仕事をしっかり収めて、七月の初旬、夜中の便で二人はパリに向けて出発した。

義母が一緒に行きたいと言うのを大吾が必死に断っていた。

新婚旅行なんだから二人だけにしてくれと言って、渋々義母は折れたけど向こうでばったり会うような嫌な予感がする。

美玖の嫌な予感はよく当たる。

美玖は高級ホテルよりもイギリスでいえばB&Bのような小さいけれどおしゃれな邸宅のようなホテルに泊まりたいと言う希望を出した。

由美子のマンションのコーデイネ―トの参考にするには大きなホテルはあまり意味がないと思ったのだ。

邸宅の感じのこじんまりとしたホテルの方がイメージもわく、大吾はそこまで仕事を意識しないでパリを楽しめばいいと言ってくれたが、美玖は大きなホテルよりアットホームなホテルの方が良いと大吾にお願いしたのだ。

旅行社はサンジェルマンデプレにある小さいけれど洗練されたおしゃれなホテルを取ってくれた。

部屋はスイートで朝食付きで予約すればデイナーも可能だ。

ホテルの正面からは見えないけれどレストランは中庭に面している。

四方を建物で囲まれているが上手に壁面を木々で覆い小さな噴水やシンボルツリーもあって、ガゼボのような屋根付きのスペースもあり美玖たちは毎日外で朝食をいただいた。

毎朝同じ時間に一人のマダムが朝食を食べに来ていた。

ホテルに泊まっているわけではないらしいが近くに住む方だという事だった。

所作も綺麗で上品なマダムだった。

このレストランは朝食や夕食以外の時間も宿泊客に開放されていて、初夏の心地いい日差しを浴びて中庭のガゼボで二人座ってボーッとしている事もあった。

美術館や小さなギャラリーを何件もはしごした後の午後の遅い時間に紅茶を飲みながら二人でまったりとした時間を過ごすのは極上だった。

美玖も大吾も非日常のパリでの滞在を十分に楽しんでいた。
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