どん底貧乏美女は夢をあきらめない
可愛い初孫が一気に二人も生まれるのだ、舞い上がる気持ちもわかる。

美玖はまあ飽きるまで義母の好きにしてもらえばいいと暢気に構えていたが、子供が生まれてくるまで、そのハイテンションは下がる気配もなく、夜討ち朝駆けでやって来ては、美玖の世話をやいたり、この頃得意になった美玖の節約レシピで、お昼ご飯も作ってくれるのだ。

あの何もできなかった義母がきつねうどんと聞いて器をきつねを探して覗き込んでいた義母が、今ではきつねうどんもさっさと作ってしまうとは驚きの美玖だったが、臨月が近づくと二人分の体重で思うように動けなくなって、随分と義母に助けられた。

そして、陣痛が来た時もそばにいたのは義母で、たまたま事務所にいた大吾を呼びつけると、てきぱきと指示を飛ばし、うんうん唸る美玖を見ておろおろと右往左往する大吾を叱り飛ばし、大吾の運転する車で病院まで付き添ってくれた。

病室に入る間もなく子宮口がかなり開いているという事ですぐに分娩室に入れられた。

大吾は立ち合いを希望していたので一緒に分娩室に入ったのだが、美玖の痛がる様子や唸り声を聞いて怖気づいてしまい、一人目が出てきた時には、顔面蒼白で血だらけの我が子を見て意識を飛ばしてしまったらしく、後で少しの間記憶が無くなったと言っていた。

しかし、分娩室は戦争でもう一人がなかなか出てこなくてみんな右往左往していたので誰も大吾にかまう人なんていない。

そして二人目の男の子が大きな産声を上げると意識を取り戻した大吾は今度はしっかりと二人の子供をその手に抱き上げることができたようだ。

美玖はもう疲労困憊で、その後の事は何も覚えていなかった。

気が付くと病室のベッドにいて大吾と義母が一人ずつ赤ちゃんを腕に抱いてご機嫌に、にこにこしていた。

「美玖ちゃん、ご苦労様。やっぱり双子は
大変だったわね。
今度は一人ずつにしなさいよ」

と暢気にのたまう義母。

美玖は“もう二度とごめんだ”双子を生んだ直ぐ後に次の…なんて考えられない。

義母の能天気な言葉には呆れるが、今回は本当に助けてもらった。

この後の育児もきっと張り切って手伝ってくれるだろう。

大吾が双子を上の子は美鈴、下の子は雄吾と大吾と美玖の感じから1文字ずつとって名付けてくれた。
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