人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます

「イケメンなのにクールなのよね。私はああいう人嫌いじゃないけど」
　まりえさんはにっこりと笑った。そして私の肩をポンポンと叩く。
「宍戸ドクターに言われたことメモ帳に挟んであるからパソコンに入力しといて。じゃあお先に失礼します」
　仕事をしてから帰るのかと思っていたのに、私に引き継ぐための準備を済ませただけだったようだ。
　まりえさんは、悪びれた様子はまったく見せずにその場からいなくなってしまった。
　彼女がいなくなると、他の事務員が近づいてくる。
「大丈夫？　手伝うことある？」
「大丈夫ですよ。お子さんが待っているんですよね。お先に帰ってください」
「ありがとう。あまり遅くならないように帰ってね」
　夜勤担当もすでに出勤しているが、その人たちは夜勤中にやることがあるので、日勤の仕事は、日勤の担当者で済ませてから帰らなければいけないのがルールだった。

　私の仕事が終わったのは二十一時。