人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます

　真剣な気持ちが伝わってきて断るのが申し訳なくなってしまう。友達からと言われても、相手は患者様のご家族だ。プライベートで関わるのは違う気がする。
　困っていると宍戸ドクターが近くにやってきた。
「チロ君、大丈夫そうだね」
　患者さんに直接話しかけて、にっこりと笑っている。チロ君は尻尾フリフリとしてシシドドクターを直視する。
　薬の副作用がでていないか会計中に確認しにドクターが顔を出すことがある。こういうときは宍戸ドクターのとびきりの優しい笑顔が見ることができるチャンスだ。
「もし何か変わったことがあればすぐにいらっしゃってくださいね」
　患者さんのご家族に安心するように説明した。
「ありがとうございます」
「それと、うちのスタッフは患者様のご家族とプライベートで関わるのは禁止されているんです」
「そうなんですね……。すみません」
「お大事に」