人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 宍戸ドクターが見送ると、チロ君のご家族は恥ずかしそうに自動ドアを出て行った。
「プライベートで関わるのは禁止されていると断るべきだな」
 先ほどと変わってクールな口調で小さな声で言った宍戸ドクターは診察室へと戻った。
 困っていたところ助けてくれたのでホッとする一方、まりえさんは殺気を感じるほどに、私のことを睨みつけていた。

   *

 チロ君のご家族から声をかけられて数日後、私は夜勤だった。
 今日は、落ち着いていてほとんど患者さんがいない静かな夜。
 書類の整理をしたり、予約のチェックをしたりして時間を過ごしていた。
 休憩時間になり、休憩室に入り弁当を広げる。
 夜は基本的に事務員が二人だ。お互いに入れ違いで休憩をすることになっている。
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