人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます

「そんな事情があるなんて知らなかった。申し訳ない」
　医者はプライドが高いのかなと思っていたけれど案外素直に謝ってくれたので私は拍子抜けしてしまう。
「でも言い訳させてもらってもいいか？」
　私はコクリとうなずいた。
「俺にとって動物は、特別な存在なんだ。だから動物を例えにしてバカにするようなやつは絶対に許せない」
　獣医師という職業を選ぶくらいだ。今の発言を聞いて心から動物のことを大切にしているのだというのが伝わった。
「宍戸ドクターが私のことをバカにして言っているんじゃないというのが伝わりました。それだけで救われた気がします」
「理解してくれて安心した」
　ほっとしたような声音だった。
「ところで話が変わるんだが、先日お礼をすると言ったのを覚えているか？」
　チョコレートを渡したことだ。覚えてはいるがまさか本当にお礼をしてもらおうなんて思ってはいない。