人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
「覚えていますがチョコレート一つでお礼なんてしていただかなくても大丈夫です。逆に失礼をしてしまって申し訳ありませんでした」
 頭を下げてから宍戸ドクターに視線を移すと、クールな瞳が私をまっすぐに見つめている。
 こんな至近距離で長い時間、話したことがなかったので、心臓の鼓動の動きがおかしくなってしまいそうだ。
 動物さんと接しているところを遠くから見て、素敵な人だなと少し憧れていただけなのに、こうして会話をしていると楽しくて心地がいい。
 もっといろんな話をしてみたくなってしまう。
「はっきりと言わせてもらう」
 険しい表情をしたので何を言われるのかと私は身構えた。
 患者さんには優しいが職員に対してはクールで厳しい部分もある。私は何かを失敗してしまったのだろう。
 しっかり話を受け止めようと彼の瞳を見つめた。
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