人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 バックヤードにて、パソコンで入力業務をしていると、宍戸ドクターが入ってくる。目が合って心臓が大きく跳ねた。
「山井さん、これお願い」
「了解しました」
 書類を受け取って確認していると、後ろから手が伸びてきて指をさして説明してくれる。
「ここ、わかりにくいと思うけど正しくは赤ペンで書いてあるところだから」
「は、はい」
 あまりにも近い距離なので耳が熱くなってきた。
「土曜日楽しみにしてるから」
 私にしか聞こえない声で言い、事務所を出て行く。
 二人だけの隠し事をしているかのような気持ちだ。
 思わず舞い上がってしまいそうだったが、私とプライベートで食事をしたいなんて何か裏があるのかもしれないと疑ってしまう。

   *

 いよいよ当日を迎えた。
 指定されたのは、都内の有名なホテル。
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