人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます

　そこまでかしこまった服装ではなかったので安堵する。私服姿も素敵だ。どんな格好をしても似合っちゃうのかも。
「待たせて悪かった」
「いえ、今来たところです」
「急患が入らなくてよかった」
　仕事が終わってから私と約束を守るためにわざわざ時間を取ってくれたのだろう。
「じゃあ行こうか」
「はい」
　私は緊張しながら彼の後ろを歩いていく。案内されたのは五階にあるカジュアルなイタリアンレストランだった。
　そんなに高いところではないので遠くまでは見えないけれど、ここのホテルは立派な庭園が見える。ライトアップされていてとてもきれいだ。
「アルコールは大丈夫なのか？」
「はい、大丈夫です」
　というか飲まなければこの状況を乗り越える自信がない。
　プライベートで宍戸ドクターと食事をするなんて特別な時間すぎる。これは普通のことではないのだ。
「ワインでいいかな」
「はい」
　ワインを注文した。