人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 今日はコース料理を選んでくれていたらしい。
「病院に行かなきゃいけないかもしれないから、アルコールは一杯だけにしようと思う。飲みたかったら遠慮しないで飲んでくれ」
 そういうところにも気を使っているのかとハッとした。
 急患が来てすぐに向かわなければいけないこともある。
 赤ワインが運ばれてきて乾杯をする。すぐに前菜が運ばれてきた。
 緊張で指先が冷たくなっているけれど食事はとても美味しい。
「この前はプードルと言って申し訳なかった」
「いえ、もう気にしていないので大丈夫ですよ」
 あえて明るい口調で言った。
「俺にとってはそんな変な意味で言ったわけじゃなくても、嫌だなって受け止める人もいる。配慮が足りなかったと反省していたんだ」
 プライドが高いドクターかと思っていたのに素直に謝るところは謝ってくれる。前もそうだった。
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