人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
「あなたは宍戸ドクターにはふさわしくない人間なの。少し優しくされているからって勘違いして本当に目障り。私の目の前から消えてほしいわ」
 ムッとした表情を浮かべて、まりえさんは私の前から去っていく。
 あまり気にしないようにしようとは思っていたけれど、あんなにはっきり言われると胸が痛くなる。
 でも今は子犬たちの命が助かることが重要なことだ。私はふたたび助かるようにと祈り始めた。
 それからしばらくして、宍戸ドクターが治療室から出てきた。
「数日間は入院することになると思うが、命は大丈夫だ」
「よかったです……」
 命が助かったのは嬉しいけれど、子犬たちはどうするのだろうか。
「もう心配ないから家に帰って休んだほうがいい」
「宍戸ドクターは……?」
 仕事が終わったばかりの宍戸ドクターもきっと疲れ切っているはずだ。心配になって思わず質問をしてしまった。すると彼は優しい表情を私へ向けた。
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