キミと桜を両手に持つ

 栗原さんは今回初めて会う人で、この10月にアメリカから帰ってきたばかりらしい。花園さんや黒澤さんよりやや年上の30歳くらいかなと思う。

 「う、うん。またダメだった」

 「そっかー。神楽坂さん結構厳しいね。でもこの企画が上手くいけばきっとアメリカの本社にいけるよ!だから頑張りな」

 「えっ?花園さんアメリカに行かれるんですか?」

 黙って二人の会話を聞いていた私と花梨ちゃんは意外な話に思わず聞き返した。

 「あ、ち、違います!その、毎年実績がある人が選ばれてニューヨークの本社に半年から一年の研修を兼ねた赴任になるんですけど、その……私よりも出来る人は沢山いるので、多分私は選ばれないと思います……」

 アグノスは元々アメリカの大手アパレルの子会社で主に日本を含めたアジア全般の若者向けに展開している会社だ。でも本社がニューヨークにあるとは知らなかった。

 「もう香澄はいつもそうやって自己評価が低いんだから!大丈夫だって。その為に神楽坂さんがあなたに実績を積ませようとしてこうしてリーダーをやらせてくれてるんだから」

 栗原さんは励ますように花園さんの背中をポンポンと叩いた。

 「……神楽坂さんが……?」

 思わず呟いてしまった言葉を聞いた栗原さんがふと顔を上げて私を見た。

 「そうなんです。あ、神楽坂さんは以前にも赴任された事があって今回再び行くことが既に決まってるんです。でも彼の場合おそらく1年じゃなくて3年から5年の任期になるんです。それで部下の花園さんも一緒に連れて行こうと思ってるんじゃないかと思うんです。私も一年間行かせてもらってすごくいい経験になったし、今回は花園さんを行かせようとしてこうやってショッピングサイトの担当などをさせて実績を積ませてるんです」
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