キミと桜を両手に持つ
彼女にそう説明を受けて神楽坂さんの方へ視線を向けた。彼は撮影スタッフと一緒に飲みながら何か楽しそうに話している。じっと見ているとふと視線をこちらに向けた彼と目が合った。彼は私と視線が合うとふっと微笑んで軽く会釈した。慌てて私も会釈をすると視線を花園さんに戻した。
「ふふっ、神楽坂さんって香澄のこといつもすごく気にかけてるよね。厳しいんだけど香澄のことよく見てるっていうか……。もしかしてあなたの事が好きで一緒にニューヨークに連れて行こうと思ってるのかも」
栗原さんが冗談っぽく言うと、花園さんは少し青ざめて首をぶんぶん横に振った。
「そ、それは絶対にないと思う」
「えー、そうかなぁ。いいじゃん、神楽坂さん。すごく仕事もできるしかっこいいし」
花園さんは何か考えているのかしばし俯いて沈黙した。
「……私、誰も好きになる資格なんてないし……」
そうボソリと呟いてビールを一気に仰ぐ彼女を私はまじまじと見る。私以外誰も聞いてなかったのか、栗原さんはお店の人が持って来たビールジョッキを次々と黒澤さんや花園さんに手渡している。
花園さんと神楽坂さんか……。一体何があったんだろう……。
そんな事を考えながら花園さんを見ていると、私の近くに座っていたアグネスの広報担当で40歳くらいの男性が声をかけた。
「如月さん、うちの神楽坂くんどう?仕事もできるしお買い得だよ。今だともれなくニューヨーク行きがついてくる。如月さんとだったら仕事も出来る美男美女でお似合いだと思うな〜」
「もう、森本部長、それセクハラですよ」
栗原さんが嗜めると、森本部長は「え〜」と言って頭をかいた。
「これもセクハラになるの?俺はさ、ただあいつのことを心配して言っただけなのに。ニューヨークに長いこと赴任になるなら嫁さんの一人ぐらい連れて行かせたくなるだろ。あいつもそれなりの歳なんだし」
森本部長と栗原さんが言い争っているのを聞きながら、私は再び視線を彼に移す。