キミと桜を両手に持つ

 「花園さん、誰かと一緒に歩む人生は幸せだ。でも誰かに合わせて歩む人生は苦しくなる」

 一樹は溜息をつくと、以前蓮に言われた言葉をそのまま彼女に伝えた。

 「他人の意見や自分がどう見られているか気にして背伸びばかりしていては苦しくなるだけだ。いつか君と一緒に人生を歩んでくれる人が見つかる」

 それを聞いた彼女は泣きながら言葉を絞り出した。

 「でも、私、こんなだから……きっと一生誰も幸せに出来ない……」

 「それは全て君次第だ。人は他人を変えることはできないが自分自身ならいくらでも変える事ができる。もっと自分に自信を持つんだ。君は君自身が思っているよりもずっと価値のある人間だ。経験を重ねてもっと広い世の中を見て視野を広げれば今まで気付かなかった事が色々と見えてくる」

 花園さんは涙を両手で拭うと、悲しく微笑んだ。

 「藤堂さんは一緒に人生を歩んでくれる人が見つかったんですね」

 「ああ、見つかったよ」

 そう頷くとガタンと椅子を引いて席から立ち上がった。

 「藤堂さん、信頼を裏切ってしまって本当にごめんなさい。傷つけてしまってごめんなさい」

 再び泣きながら謝る彼女を一樹は最後に見た。

 「凛桜から君がニューヨークに行くと聞いた。頑張れ」

 「うん……ありがとう……。藤堂さんもお元気で……」

 コクンと頷いて必死に涙を拭う彼女を残して一樹は凛桜の元へと向かった。

 「もう終わったんですか?」

 店の前でスマホを見ながら待っていた凛桜は驚いたように一樹を見た。

 「終わったよ。家に帰ろう」

 一樹は微笑むと凛桜の手に指を絡めた。彼女は嬉しそうに微笑んで手を握り返すと一樹を見上げた。

 「今晩何食べたいですか?」
 「そうだな、少し寒くなってきたから温かいものがいいかな」
 「じゃあ、簡単にお鍋はどうですか?」
 「うん、いいな」

 一樹は美しい夕焼けを見ながら幸せそうに隣を歩く彼女の額にキスをした。そして今手の中にある幸運に感謝しながら家路についた。

 

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