キミと桜を両手に持つ
しかし花園さんとはどれだけ足掻いても後退することはあっても前進することはなかった。でも凛桜とは喧嘩しても問題に直面しても簡単に乗り越えられる。乗り越えていく度に着実に二人の関係が前進しているのがわかる。今でこそ違いがはっきりとわかる。結局花園さんは一樹にとって運命の相手ではなかったのだ。
「君はいつも苦しそうでどんなに俺が言葉をかけても不安が募るばかり。婚約までしてみたけど、結局何も解決する事はできなかった。君はやり直したいと言うけど、俺を取り巻く環境は今でも昔と何一つ変わらない。仕事で女性に会う事はあるだろうし、こういう生まれだから男女関係なく色々な奴が近寄ってくる。それなのに君はまた同じ事を本当に繰り返したいと思うのか?」
花園さんは言葉に詰まって俯いた。おそらく彼女自身も心の底ではそんなこと思ってないはずだ。だったらなぜ……と一樹はしばし考える。
そもそも彼女は自分の意思で思い立って大きな行動を起こす事はあまりない。彼女が何かする時は大抵誰かの意見に左右されている事が多い。彼女が自分に告白してきたのだって今になって考えると同僚や誰かに唆されてやったと考える方が自然だ。そう考えると一つ思いつく事がある。
「君のご両親の為か……」
一樹がそう言うと、彼女は両手をギュッと握りしめた。
彼女の家族には何度か会った事がある。父親はとても厳格な人で失敗を絶対に許さない人だ。母親は世間体ばかり気にする人で、出来の良い息子だけを溺愛している。
婚約が破棄になった時、彼女の父親と母親は何度も一樹や一樹の両親に会いに来た。特に母親は何度も考え直してくれと、もう一度チャンスを与えて欲しいと一樹に縋ってきた。もしかしてこの三年間両親に婚約破棄の事を言われ続けてきたのか、それか一樹がアメリカから戻ってきた事をどこかから聞きつけて再び何か言われているのかもしれない。