キミと桜を両手に持つ

 「凛桜、長谷川さん、本当はもう少しゆっくり時間をあげたいんだが時間がない。凛桜、どうする?入場する時なんだが、その、長谷川さんに──…」

 一樹は凛桜を見ながら言い淀んだ。花嫁がバージンロードを歩く時、今まで彼女を支えてくれた大切な人という意味で父親にエスコートしてもらうのが一般的だ。でもエスコートされないで一人で歩く花嫁もたくさんいる。特に長谷川さんは凛桜とは過去20年以上も付き合いがない。でも彼は凛桜の唯一の肉親だ。

 一樹と長谷川さんがじっと見守る中、凛桜は長谷川さんに向き直ると頭を下げた。

 「……お父さん、エスコート役をお願いします」



✿✿✿



 式が始まり、愛らしい紬が花びらを撒いてバージンロードを清めながら歩いてくる。一樹は父親と共にそのバージンロードをゆっくりと歩いてくる凛桜を祭壇の下でじっと見つめた。最愛の女性がこれからの長い人生彼と共に歩むために自分の元へと歩いてくる。

 一樹の目の前までくると長谷川さんは一樹に深々と頭を下げた。

 「……娘を、凛桜をどうぞよろしくお願いします。これからの彼女の人生がいつも幸せであるように……どうか凛桜をよろしくお願いします」

 「必ず幸せにするとお約束します」

 一樹は頷くと彼に頭を深々と下げて凛桜を父親から受け取った。

 新婦側の席には凛桜の父親が最前列に座り、その隣には凛桜の母親の写真がある。一樹は今は天国から見ているであろう彼女の母親にも同じように心の中で誓った。その後ろの席には、前田さん、加賀さん、皐月さん、佐伯と遠坂をはじめ大勢の会社の人達が座っている。彼らとそしてブライズメイド、グルームズマン、家族が見守る中、凛桜を見て微笑むと彼女と共に祭壇の前に立った。
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