キミと桜を両手に持つ

 ふだん服を着ているとスリムに見えるのにかなりの筋肉質。デスクワークが多いとお腹が出てきたりと弛んできそうなのによく運動するので全くそんな事もない。

 目の奥に焼きついた彼の男らしい体をなんとか振り払おうと頭をふるふると振った。ドキンドキンと心臓が早鐘をうっていて、朝から刺激が強すぎる。

 「あの、ちょっと目を閉じててくださいね」

 彼の体をなるべく見ないようにして、バスルームのドアの隙間に体を滑り込ませた。

 昨日の夜お風呂に入った時、ブラを手洗いしてバスルームの中に干していた。これだけはどうしても手洗いしないとカップの形が崩れてしまうし乾燥機にもかけれないので、除湿機能のあるこの部屋に干していた。大抵朝にはほとんど乾いているので彼が使う前に自分の部屋に持って帰っていたのに今日はうっかりしていて忘れていた。

 「絶対に見ないでください」

 再び彼に念を押しながらレースの刺繍の入ったブラを急いでハンガーから外した。すると後ろの方でクククっと笑う声が聞こえた。

 「女性の下着くらい見たことあるから俺は全然気にしないよ」

 「わたしが気にするんです!」

 恋人でもない男性に、しかも同じ職場の上司で、イケメンでものすごく男らしい藤堂さんのような男性に下着を見られるなんて恥ずかしすぎる。

 ブラを腕の中に隠して再び彼の体を見ないようにドアの隙間から出ると、頭上から彼の笑う声が聞こえた。

 「凛桜って結構派手な下着を着るんだな」

 「も、もう!見ないでって言ったのに!!」

 憤慨して彼を見ると、言いつけ通りちゃんと目を閉じている。

 ひどい!私をからかって!

 頬を膨らませて「どいてください」とドアの前に立ちふさがっている彼に言うと、彼は目を開けて私を見下ろした。彼の視線が私の持っているブラに向けられているような気がして慌てて縮こまって腕の中に隠した。
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