無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
 このままなかったことにしようとしているのかな。 

 今後も今の暮らしを続けていくつもりなのだろうか。いくら合理的だからってどうしてそれでいいと思えるおんだろう……ああなんだか虚しくなる。

 でもこの気持ちを彼に訴えても分かってもらえないだろう。

 私は俯き真っ白なシーツを握り締めた。

「家にはいつ帰っていいの?」
「三日ほど入院して貰う」

 私は驚き克樹さんを見つめた。

「そんなに? 家で安静にしてればいいんじゃないの? それに……」
「先ほども言ったが数日は様子を見る必要がある」

 私の訴えはばっさりした返事に遮られる。

「でもここは特別室じゃないの? 私が占領しているのは申し訳ないんだけど……」

「構わない」
 ――心配で家にひとりになんてできない。ここに居てくれたら、いつでも駆け付けることができるから安心だ。

「……え?」

 あれ?……今、なんだかあり得ない台詞が聞こえてきたのだけど……克樹さんの声だったような気がするのだけど。

「どうかしたのか?」

 思わず眉間にしわを寄せる私に、克樹さんが眉を顰める。

 なんて可愛げがない顔をしているんだって言いたそうな呆れた表情だと思った。ところが。

 ――きっとまだ混乱しているんだな。くそ、あのとき手が届いていたら羽菜をこんな目に合わせなかったのに。

「あの、克樹さん……もしかして私を揶揄ってるの?」
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