無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
どれくらい眠ったのか、目を覚ますと窓の外はすっかり暗くなっていた。
寒気と節々の痛みを感じる。更に熱が上がりそうだ。
そう思ったとき、部屋のドアがそっと開いた。
何かを抱えた羽菜が近づいてくる。彼女は俺が目覚めたことに気づき驚いたのか、びくりと体を震わせた。
『あ……克樹さん目が覚めたんだね。勝手に入ってごめんなさい。心配で様子を見たらすごく寒そうにしていたから毛布を持ってきたの』
羽菜が抱えていたのは電気毛布だったようだ。
『ああ……』
面倒をかけてしまい申し訳ない気持になったが、毛布をもってきてくれたのはありがたかった。
羽菜が羽毛布団の上に電気毛布をかけてくれた。
『すまない、手間をかけたな』
俺の言葉に羽菜は優しい笑顔になった。
『手間じゃないから大丈夫だよ。他になにかしてほしいことはある?』
『とくにないが、今は何時だ?』
『八時五分前。あの、薬を飲むのになにか食べた方がいいよね。よかったらおかゆを作ってくるけど』
『……そうだな。頼めるか?』
『もちろん。すぐに用意するから克樹さんは寝ていてね』
羽菜はそう言い部屋を出て行き、しばらくすると木製のトレイを持って戻ってきた。トレイの上には土鍋に入ったおかゆと取り皿、木製のれんげに水が入ったコップが乗っている。
移動せずこの場で食べられるようにしてくれていた。気遣いがありがたい。
羽菜はベッド脇のテーブルにトレイを置き土鍋のおかゆを取り皿に移した。
『少し冷ましてあるけど、一口目は気をつけてね』
『ああ……』
ひとくち掬って口に運ぶ。とても優しい味付けで、体調の悪さを気遣って作ってくれたのが分かった。
冷え切っていたからだが温まる気がする。
『ありがとう……今日は迷惑をかけてばかりだな』
本音を口にした。実際彼女がいなかったらきつかっただろう。
羽菜は僅かに目を見開き、それから花が咲くように微笑んだ。
『迷惑なわけないよ。家族が病気なら心配するのも看病するのも当たり前でしょう?』
『家族……』
『うん。私と克樹さんは家族だよね?』
直ぐには答えられなかった。
これまで羽菜を家族だと意識したことはなかったから。
そもそも家族という関係を重要視したことはなかった。俺にとって両親も腹違いの兄も血が繋がっているだけの存在で、慈しむよりも警戒する相手だ。
けれど羽菜は彼らとは違う。警戒はしていない。身近にいて当然の相手だといつの間にか思うようになっていて……。
戸惑う俺に羽菜は、困ったように眉を下げてから気を取り直すように言う。
『とにかく今は遠慮しないで頼ってね。医者だって人間なんだからたまには休まないと』
羽菜は俺の返事を待たずにトレイを持って部屋を出て行った。
その後寒気はなくなったが、今度は高熱に苦しむことになった。
羽菜は部屋の温度を調整し、タオルに包んだアイスノンを用意し、汗を拭いてくれた。
彼女は医者でもナースでもない。それなのに一晩中看病してくれたのだ。