無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
克樹さんにも話していない。好き嫌いを教えるほど親しくないし、そもそも一緒に食事をする機会が少なかったから。
だからこれはただの偶然だよね?
でも……洋食のビュッフェは玉ねぎを含む料理が多い。あえて選ばないとこうならないんじゃ……。
「あの、克樹さん」
「どうした?」
「私の好き嫌い知ってるの?」
気にしていても仕方ないので、直接聞いてみることにした。
「玉ねぎが苦手だと思っていたが」
「当たってるけど、どうして知ってたの?」
「この前親子丼をつくってくれたとき、羽菜の分には玉ねぎが入ってなかったから嫌いだからだと思った」
「……よく気づいたね」
卵の中に玉ねぎが入ってなくても、普通は気づかないんじゃないだろうか。
「さすがの観察眼だね」
夫としてはどうなのと思うことばかりだけれど、やっぱり能力は高い人だ。
感心していると克樹さんが、ほんの僅かに微笑んだ。
――羽菜は喜んでくれているみたいだな。よかった。
優しい声が脳内に響き、私はぱっと視線をそらした。料理に集中するふりをしてフォークを口に運ぶが、心臓はどきどきとうるさく鳴っている。
離婚を切り出して以降の克樹さんの激変に、なかなかついていけない。
ささやかなことだとしても、こんなに彼が私に尽くしてくれるなんて……。
そこまでして離婚したくないの? 私の機嫌を取る方が面倒だとは思わないの?
克樹さんの気持ちが分からない。
心の声が聞こえるようになっても、私はまだ彼が理解できていない。無感動で冷たくて笑顔なんて見せてくれなくて、妻すら近づくのを嫌う人だと思っていたのに……。
それとも今の彼が本当の姿なのだろうか。
「……克樹さんってどんな子供だったの?」
「え?」
「さっき美恵さんが昔はやんちゃだったって言ってたでしょう? でもぜんぜん想像が出来なくて」
「そうだな……」
克樹さんが相槌を打つ。僅かに目じりが下がった。
――俺に興味を持ってくれたのか。
やけに浮ついた声がダイレクトに頭に響く。
別に深い意味があって聞いてる訳じゃないのに。こんなときに限って前向きに受け止めている。
そわそわしながらも私は続きを促す。
「子供のころは今みたいに無口じゃなかったでしょ?」
「ああ、おしゃべりで、祖父にうるさいと怒られていた」
克樹さんが懐かしそうに目を細める。多分過去を思い出しているのだろう。彼がこんな表情をするのは珍しくて、私はつい見入ってしまう。
「楽しい子供時代だったんだね」
「……祖父とはいい思い出ばかりだ」
克樹さんの表情に一瞬影が差した。それは迷いなく楽しかったと言えない何かがあったのだと感じさせるものだった。
もしかしてお祖父さま以外の家族と上手くいってなかったのかな。
先ほど美恵さんが祖父と義父の関係がよくなかったと言っていた。幼い克樹さんはその様子を見て小さな心を痛めていたのかもしれない。
それに……克樹さんは今も両親との関係がかなり希薄だ。結婚してから一年経つが義実家に言ったのは年始の挨拶のときだけで、定期的な食事会のようなものはない。
義実家って私が思っているよりも、よくない関係なのかな。
だからこれはただの偶然だよね?
でも……洋食のビュッフェは玉ねぎを含む料理が多い。あえて選ばないとこうならないんじゃ……。
「あの、克樹さん」
「どうした?」
「私の好き嫌い知ってるの?」
気にしていても仕方ないので、直接聞いてみることにした。
「玉ねぎが苦手だと思っていたが」
「当たってるけど、どうして知ってたの?」
「この前親子丼をつくってくれたとき、羽菜の分には玉ねぎが入ってなかったから嫌いだからだと思った」
「……よく気づいたね」
卵の中に玉ねぎが入ってなくても、普通は気づかないんじゃないだろうか。
「さすがの観察眼だね」
夫としてはどうなのと思うことばかりだけれど、やっぱり能力は高い人だ。
感心していると克樹さんが、ほんの僅かに微笑んだ。
――羽菜は喜んでくれているみたいだな。よかった。
優しい声が脳内に響き、私はぱっと視線をそらした。料理に集中するふりをしてフォークを口に運ぶが、心臓はどきどきとうるさく鳴っている。
離婚を切り出して以降の克樹さんの激変に、なかなかついていけない。
ささやかなことだとしても、こんなに彼が私に尽くしてくれるなんて……。
そこまでして離婚したくないの? 私の機嫌を取る方が面倒だとは思わないの?
克樹さんの気持ちが分からない。
心の声が聞こえるようになっても、私はまだ彼が理解できていない。無感動で冷たくて笑顔なんて見せてくれなくて、妻すら近づくのを嫌う人だと思っていたのに……。
それとも今の彼が本当の姿なのだろうか。
「……克樹さんってどんな子供だったの?」
「え?」
「さっき美恵さんが昔はやんちゃだったって言ってたでしょう? でもぜんぜん想像が出来なくて」
「そうだな……」
克樹さんが相槌を打つ。僅かに目じりが下がった。
――俺に興味を持ってくれたのか。
やけに浮ついた声がダイレクトに頭に響く。
別に深い意味があって聞いてる訳じゃないのに。こんなときに限って前向きに受け止めている。
そわそわしながらも私は続きを促す。
「子供のころは今みたいに無口じゃなかったでしょ?」
「ああ、おしゃべりで、祖父にうるさいと怒られていた」
克樹さんが懐かしそうに目を細める。多分過去を思い出しているのだろう。彼がこんな表情をするのは珍しくて、私はつい見入ってしまう。
「楽しい子供時代だったんだね」
「……祖父とはいい思い出ばかりだ」
克樹さんの表情に一瞬影が差した。それは迷いなく楽しかったと言えない何かがあったのだと感じさせるものだった。
もしかしてお祖父さま以外の家族と上手くいってなかったのかな。
先ほど美恵さんが祖父と義父の関係がよくなかったと言っていた。幼い克樹さんはその様子を見て小さな心を痛めていたのかもしれない。
それに……克樹さんは今も両親との関係がかなり希薄だ。結婚してから一年経つが義実家に言ったのは年始の挨拶のときだけで、定期的な食事会のようなものはない。
義実家って私が思っているよりも、よくない関係なのかな。