無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
その後は席に戻り、担当業務についての基本的な説明と業務用システムの使い方などを教えてもらっているうちに、あっという間に午前中が終わった。
中村さんとはかなり波長が合った。親しみを感じて、敬語は辞めてくださいとお願いすると彼女の方も「その方が仕事がやりやすい」と喜んでくれた。
実際その後かなり打ち解けることができたのだ。
「昼休憩はだいたい職員用のカフェテリアに行っているんだけど、この時間は結構混んでるの。今日は初日だから外でゆっくり食べない? あ、お弁当を持ってきていたりするのかな?」
「いえ、持ってきていません」
昼食については同僚の様子を見てどうするか決めるつもりでいた。克樹さんに聞いてはみたものの『俺はひとりで適当に食べてる』という参考にならない返事しかもらえなかったからだ。
中村さんに着いて病院を出る。てっきり駅の方面に行くのかと思っていたのに反対方向、私たちが暮らすマンションが建つ方向に進んでいく。
こっちはあまり飲食店はないんだけどな。
「もしかして花和みに行くんですか?」
克樹さんに離婚を宣言した喫茶店がこの先にある。
「ううん。今から行くのは美味しい小料理屋。駅から離れているからあまり混んでないからゆっくりできるよ。それにメニューが豊富だから羽菜さんの好みのものもあると思う」
「小料理屋があるんですか? 近くに住んでるんですけど知りませんでした」
「分かりづらい場所にあるからね」
彼女が言っていた通り、小料理屋は住宅地の中にひっそりと存在していた。外観は普通の一戸建てと大差ないし表から中の様子が見えないので、事前情報が無ければ分からないだろう。
でも中村さんは通い慣れているようで躊躇いなく引き戸を開ける。
すると元気な声がかけられた。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは」
中村さんがカウンターの中にいた店主らしき五十代くらいの男性に朗らかに挨拶をする。ちょうどそのタイミングで、店の奥から店主と同年代と思われる女性がやってきた。
「中村さん、いらっしゃいませ。今日はおふたり様ですね。いつもの席でいいですか?」
「はい、お願いします」
にこにこと微笑む感じがいい店員さんに案内されたのは、衝立で仕切られた半個室のようなスペース。四人掛けのテーブルと椅子が置いてある。
店内はほどよく冷房が効いていて、過ごしやすい。落ち着いて過ごせる雰囲気だ。中村さんが気に入っている理由が分かる。
名前も憶えて貰っているみたいだし、頻繁に通っているんだろうな。
事前に聞いていた通りメニューは幅広く、それでいて安い。
私の好みの料理が多く、どれにしようか迷ってしまうが煮魚定食にした。中村さんは刺身定食を頼んでいた。
「雰囲気がいいお店ですね」
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「他の職員もよくきているんでしょうね」
「あまり来ないんじゃないかな。私は顔見知りに合ったことはないよ」
「そうなんですか」
意外だった。場所の問題で知られていないのだろうか。
「私が知らないだけかもしれないけどね。病院では何百人ものスタッフがいるから、全員は覚えられないからね」
「たしかに。その辺は普通の企業と一緒ですね」
前職のコンサル会社は社員数二百人程度だったが、それでも知らない人がいたっけ。
中村さんとはかなり波長が合った。親しみを感じて、敬語は辞めてくださいとお願いすると彼女の方も「その方が仕事がやりやすい」と喜んでくれた。
実際その後かなり打ち解けることができたのだ。
「昼休憩はだいたい職員用のカフェテリアに行っているんだけど、この時間は結構混んでるの。今日は初日だから外でゆっくり食べない? あ、お弁当を持ってきていたりするのかな?」
「いえ、持ってきていません」
昼食については同僚の様子を見てどうするか決めるつもりでいた。克樹さんに聞いてはみたものの『俺はひとりで適当に食べてる』という参考にならない返事しかもらえなかったからだ。
中村さんに着いて病院を出る。てっきり駅の方面に行くのかと思っていたのに反対方向、私たちが暮らすマンションが建つ方向に進んでいく。
こっちはあまり飲食店はないんだけどな。
「もしかして花和みに行くんですか?」
克樹さんに離婚を宣言した喫茶店がこの先にある。
「ううん。今から行くのは美味しい小料理屋。駅から離れているからあまり混んでないからゆっくりできるよ。それにメニューが豊富だから羽菜さんの好みのものもあると思う」
「小料理屋があるんですか? 近くに住んでるんですけど知りませんでした」
「分かりづらい場所にあるからね」
彼女が言っていた通り、小料理屋は住宅地の中にひっそりと存在していた。外観は普通の一戸建てと大差ないし表から中の様子が見えないので、事前情報が無ければ分からないだろう。
でも中村さんは通い慣れているようで躊躇いなく引き戸を開ける。
すると元気な声がかけられた。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは」
中村さんがカウンターの中にいた店主らしき五十代くらいの男性に朗らかに挨拶をする。ちょうどそのタイミングで、店の奥から店主と同年代と思われる女性がやってきた。
「中村さん、いらっしゃいませ。今日はおふたり様ですね。いつもの席でいいですか?」
「はい、お願いします」
にこにこと微笑む感じがいい店員さんに案内されたのは、衝立で仕切られた半個室のようなスペース。四人掛けのテーブルと椅子が置いてある。
店内はほどよく冷房が効いていて、過ごしやすい。落ち着いて過ごせる雰囲気だ。中村さんが気に入っている理由が分かる。
名前も憶えて貰っているみたいだし、頻繁に通っているんだろうな。
事前に聞いていた通りメニューは幅広く、それでいて安い。
私の好みの料理が多く、どれにしようか迷ってしまうが煮魚定食にした。中村さんは刺身定食を頼んでいた。
「雰囲気がいいお店ですね」
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「他の職員もよくきているんでしょうね」
「あまり来ないんじゃないかな。私は顔見知りに合ったことはないよ」
「そうなんですか」
意外だった。場所の問題で知られていないのだろうか。
「私が知らないだけかもしれないけどね。病院では何百人ものスタッフがいるから、全員は覚えられないからね」
「たしかに。その辺は普通の企業と一緒ですね」
前職のコンサル会社は社員数二百人程度だったが、それでも知らない人がいたっけ。