無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
彼と違って私は決して口数が少ない訳じゃないけれど、それでも大切なことを伝えられていないのかもしれない。
考えてみたら私は離婚をしたいと宣言したあと、克樹さんに対してかなりの塩対応だった。
克樹さんの立場で考えたら、遠慮がちな態度は自然なことだ。私と違って楽観的なタイプではないのだし。でもこんなふうに一方の顔色を窺うような関係でいるのは寂しい。
「……私、本当に嫌だと思ってないから、ここでちゃんと休んで」
「羽菜……」
克樹さんはそれでもまだ信じられないようだ。
「私たちは一応夫婦なんだし一緒に寝たって問題ないよ」
「……羽菜は俺に触れられても本当に嫌じゃないのか?」
「嫌じゃないよ。近寄るのも嫌だと思ったらいくら政略結婚でも断固拒否していたし……私は克樹さんと結婚して幸せな夫婦になるつもりだったんだから」
克樹さんの顔に後悔が滲む。
「羽菜の気持ちを俺が台無しにしたんだな」
――俺はなにも分かってなかったんだ。
「でも今はちゃんと歩み寄る努力をしてくれているのが伝わってくるよ。ちゃんと謝ってくれたし、私は後悔するよりどうしたら幸せになれるのか考えたいな」
「幸せに」
「うん。初めからやり直す気持ちになればいいかもしれない」
これで少しは前向きになってくれたらいいのだけれど。
克樹さんは何かを考えるようにしばらく無言だったけれど、やがてとてもうれしそうな笑顔になった。
「羽菜、ありがとう」
「どういたしまして」
よかった。分かってくれたみたいだ。
ほっとしたそのとき、克樹さんの腕が伸びてきて驚く間もなく引き寄せられた。
「羽菜……」
気づけば私は、彼の逞しい腕の中に包まれていた。
えっ? いきなりどういうことなの?
隣で眠るのにも遠慮していたというのに、突然の豹変についていけない。
「羽菜が、初めからやり直そうと言ってくれてうれしかった」
「え……う、うん」
克樹さんの腕の力が強くなる。息苦しさを感じるほどだけれど、それは彼の想いの強さが表れているような気がした。
まさかそんなに感動してくれるなんて。
「二度と間違ったりはしない。何よりも大切にするから」
克樹さんの低い声が耳をくすぐる。
まるで愛の告白のようなそれに、私の心臓はどきどきと忙しなく音を立てる。
克樹さんが私の上に覆いかぶさってきた。
部屋の明かりは落としてあり薄暗いけれど、彼に見つめられているのをひしひしと感じる。そのとき。
――愛してる。
克樹さんがはっきりとそう言った。
愛してるって私を?
目を見開く私の頬を、克樹さんの大きな手がそっと撫でる。
緊張で息苦しさを感じるくらい。でも同じくらい胸がときめている。
――今から羽菜とやり直そう。今度は絶対に悲しませない。幸せにしたい。
もしかして……私はようやく気がついた。
克樹さんは私が、結婚式の日からやり直そうと言ったと受け止めているのだと。
だからこれは初夜なのだ。私はこれから克樹さんと……。
どくんと鼓動が大きく跳ねたのと同時に、唇をふさがれた。
私にとって人生初めてのキスに、頭の芯がしびれるような感覚に陥った。
勘違いなのだと、そんなつもりではなかったのだと拒否することはできた。
でも私はそんな気持ちになれず、克樹さんの広い背中にしがみついた。
彼は壊れ物を扱うように優しく私に触れる。端正な顔が近づき、何度もキスをされた。
しばらくすると彼の舌が私の唇を優しく割り、口内に侵入して来た。
これ以上ないくらい深くなるキスを受けていると、体からどんどん力が抜けていき、自然と甘いため息が零れはじめる。
体の中で高まる熱をなんとかしたくて身じろぎしようとしても、克樹さんに強く抱きしめられているから逃げられない。
考えてみたら私は離婚をしたいと宣言したあと、克樹さんに対してかなりの塩対応だった。
克樹さんの立場で考えたら、遠慮がちな態度は自然なことだ。私と違って楽観的なタイプではないのだし。でもこんなふうに一方の顔色を窺うような関係でいるのは寂しい。
「……私、本当に嫌だと思ってないから、ここでちゃんと休んで」
「羽菜……」
克樹さんはそれでもまだ信じられないようだ。
「私たちは一応夫婦なんだし一緒に寝たって問題ないよ」
「……羽菜は俺に触れられても本当に嫌じゃないのか?」
「嫌じゃないよ。近寄るのも嫌だと思ったらいくら政略結婚でも断固拒否していたし……私は克樹さんと結婚して幸せな夫婦になるつもりだったんだから」
克樹さんの顔に後悔が滲む。
「羽菜の気持ちを俺が台無しにしたんだな」
――俺はなにも分かってなかったんだ。
「でも今はちゃんと歩み寄る努力をしてくれているのが伝わってくるよ。ちゃんと謝ってくれたし、私は後悔するよりどうしたら幸せになれるのか考えたいな」
「幸せに」
「うん。初めからやり直す気持ちになればいいかもしれない」
これで少しは前向きになってくれたらいいのだけれど。
克樹さんは何かを考えるようにしばらく無言だったけれど、やがてとてもうれしそうな笑顔になった。
「羽菜、ありがとう」
「どういたしまして」
よかった。分かってくれたみたいだ。
ほっとしたそのとき、克樹さんの腕が伸びてきて驚く間もなく引き寄せられた。
「羽菜……」
気づけば私は、彼の逞しい腕の中に包まれていた。
えっ? いきなりどういうことなの?
隣で眠るのにも遠慮していたというのに、突然の豹変についていけない。
「羽菜が、初めからやり直そうと言ってくれてうれしかった」
「え……う、うん」
克樹さんの腕の力が強くなる。息苦しさを感じるほどだけれど、それは彼の想いの強さが表れているような気がした。
まさかそんなに感動してくれるなんて。
「二度と間違ったりはしない。何よりも大切にするから」
克樹さんの低い声が耳をくすぐる。
まるで愛の告白のようなそれに、私の心臓はどきどきと忙しなく音を立てる。
克樹さんが私の上に覆いかぶさってきた。
部屋の明かりは落としてあり薄暗いけれど、彼に見つめられているのをひしひしと感じる。そのとき。
――愛してる。
克樹さんがはっきりとそう言った。
愛してるって私を?
目を見開く私の頬を、克樹さんの大きな手がそっと撫でる。
緊張で息苦しさを感じるくらい。でも同じくらい胸がときめている。
――今から羽菜とやり直そう。今度は絶対に悲しませない。幸せにしたい。
もしかして……私はようやく気がついた。
克樹さんは私が、結婚式の日からやり直そうと言ったと受け止めているのだと。
だからこれは初夜なのだ。私はこれから克樹さんと……。
どくんと鼓動が大きく跳ねたのと同時に、唇をふさがれた。
私にとって人生初めてのキスに、頭の芯がしびれるような感覚に陥った。
勘違いなのだと、そんなつもりではなかったのだと拒否することはできた。
でも私はそんな気持ちになれず、克樹さんの広い背中にしがみついた。
彼は壊れ物を扱うように優しく私に触れる。端正な顔が近づき、何度もキスをされた。
しばらくすると彼の舌が私の唇を優しく割り、口内に侵入して来た。
これ以上ないくらい深くなるキスを受けていると、体からどんどん力が抜けていき、自然と甘いため息が零れはじめる。
体の中で高まる熱をなんとかしたくて身じろぎしようとしても、克樹さんに強く抱きしめられているから逃げられない。