無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
 兄弟なんだから仲良くした方がいい。とくに克樹さんの場合は同じ職場で働く同僚でもあるのだから。
 けれど考えてみたら克樹さんが理由もなくそんな態度を取るだろうか。なにか事情があって不仲になってしまったのでは? 
 それなら私があれこれ言うのはよくないんじゃないかと考え今のところは余計なことは言わず、克人さんとは必要以上に関わらず程よい距離感を保つようにしている

「そういえば今日はひとりなんだね。いつも一緒に食事をしている人は?」
「私用で出ているんです」
「ひとりなら丁度よかった、羽菜さんに聞きたいことがあったの」

 克人さんとの会話に、日高先生が割り込んできた。

「聞きたいことですか?」
「ええ。克樹の家での様子とか」
「家でですか……」

 いきなりそんなことを聞かれても困ってしまう。私と日高先生はまだプライベートの話をするほど親しくなっていないのに何を語れと言うのか。
 彼女は克樹さんたちと幼馴染の関係なのだから、直接聞いた方がいいのでは?
 そんな私の心情を見透かしたように、日高先生はため息をつく。

「克樹って無口でしょう? 聞いても全然答えてくれないの」
「そうなんですか」
「でも克樹がちゃんと結婚生活を送っているのか心配で」
「……とくに問題はありませんよ」

 笑顔で返したものの、反発心を覚えてしまう。
 どうして日高先生に私たちの生活を心配されなくてはいけないのかって。それにさっきから克樹って呼び捨てだし。
 幼馴染なんだから当たり前なのかもしれないけど、私の前では少しは気を遣ってくれたっていいのに。

「それならいいけど……ほら克樹は難しい人でしょう? 羽菜さんが困っているんじゃないかと思ったの。もしそうなら相談に乗ることもできるし」
「あ……そうだったんですね。ありがとうございます」

 あれ? 結構親切な人だったみたい。悪く思ってしまって申し訳なかったな。

 第一印象があまりよくないものだったから、変な先入観を持ってしまっていたのかもしれない。

「呼び出しだ」

 密かに反省していたとき克人さんがスマートフォンを確認しながら呟いた。患者さんになにか有ったのだろうか。

「ごめん、先に戻るよ」

 克人さんが席を立つ。食事の途中で大変だと思ったが、幸い完食しているようだ。
 そういえば克樹さんも食べるのが速い。こうやって呼び出されることが多いから、自然と早食いが身に付くのかな。そんなことを考えていたが、日高先生の声で現実に戻された。

「ねえ、さっきの話だけど本当は克樹とうまくいってないんでしょう?」
「え……」

 なんだか、さっきまでと雰囲気が違っているような……親切そうな笑顔が消えて何かを探るような目をしているし。
 戸惑う私に構わず日高先生が続けて言う。

「はっきり言って、私は克樹の結婚に反対だったの」
「反対ってどうして……」

 幼馴染の関係で結婚まで口出しするものなの?
 それよりもやっぱり私の第一印象は当たっていたみたいだ。この強気で不遜な態度は私を下に見ているからだと思う。

 少なくとも私のことをよく思っていないのは間違いない。はっきり結婚反対と言うくらいだもの。さっきは克人さんが居たから猫を被っていたんじゃない?

 警戒態勢に入る私に対して、日高先生は余裕の表情だ。
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