無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
「理想としてはね。でもうちは大勢のスタッフが働く巨大な組織なんだ。綺麗ごとだけでは成り立たない。病院だって普通の企業と同じだ。そう言ったら羽菜さんだって理解してくれるだろう?」
「……そうですね」
克人さんが言いたいことは分かる。病院を運営するには莫大な資金が必要だから、理想を追ってばかりでは潰れてしまうということだ。でも克樹さんだってそれは分かっているはずだ。
彼はもっと心情的な面を訴えているんじゃないのかな。
「現実を説く僕が気に入らなかったんだろうね。克樹が急に大声を出して批難してきたから驚いたよ」
「え……それだけで言いあいに?」
もっと込み入った内容かと思っていたから拍子抜けした。同時に違和感を覚えた。克樹さんがそんなことくらいで感情的になるとはどうしても思えないから。
「そう思われても仕方ないな。克樹も相手が僕じゃなかったら、あんな態度は取らなかっただろうからね」
また含みがある言い方だ。
「あの、兄弟仲がそれほどよくないということですか?」
これは聞いていいか迷った。でも話があると呼び出したのは克人さんの方だ。私がこういった質問をするのは予想していたはず。
「うちは家庭環境が複雑なんだ」
思った通り、克人さんはなんの躊躇いもなく答えてくれてくれる。
「克樹から何も聞いてない?」
「はい」
「そうか。あいつは秘密主義だからな。それにあまり表立って言えるような内容でもないんだ。でも羽菜さんは家族になったんだから知っておくべきだと思う……僕と克樹の母親が違うのは知っている?」
「え?……いいえ知りませんでした」
私は内心驚愕していた。
お義母様が後妻で克樹さんと血が繋がっていないのは聞いていた。けれど母親違いの兄弟だったとは考えもしなかった。
そうなると、お義母さまはお義父さまにとって三番目の妻ということ?
「克樹は前妻の子だけど僕は後妻の実子なんだ。父は前妻と結婚する前から母と付き合っていてね、いわゆる不倫関係だったんだ。前妻が亡くなると父の後妻に収まった。だから僕と克樹は兄弟と言っても溝があるんだよ」
私は突然入って来た複雑な情報に困惑しながらも、今聞いた内容を頭の中で整理する。
ええとつまり、お義父様の最初の妻の実子が克樹さんで、長年の不倫相手の実子が克人さんだってことだよね?
自分の母親が亡くなって悲しんでいるときに、父親が知らない女性と年上の子供を連れてくる状況を自分に置き換えて想像してみた。私だったら混乱するし父に文句を言うと思う。
ああ……克人さんとの間がぎくしゃくしているのは無理もない。
克人さんに罪がある訳ではないけれど、それでも当時子供だった克樹さんには受け入れられないだろう。
その後時間をかけて蟠りが解けていく場合もあるだろうが、克樹さんたちの場合はそういったことはなく今に至ったということか。
複雑な環境というのが分かった。
「そのような前提だから、些細なきっかけで大きな揉め事に発展してしまうんだ……克樹はまだ僕が許せないみたいだからね」
克人さんの表情に影ができる。彼は克樹さんとの関係を改善したいと考えているのかもしれない。
「そろそろ卑屈になるところを直してほしいんだけどな」
克人さんがため息交じりに言う。私は思わず眉をひそめた。
「……そうですね」
克人さんが言いたいことは分かる。病院を運営するには莫大な資金が必要だから、理想を追ってばかりでは潰れてしまうということだ。でも克樹さんだってそれは分かっているはずだ。
彼はもっと心情的な面を訴えているんじゃないのかな。
「現実を説く僕が気に入らなかったんだろうね。克樹が急に大声を出して批難してきたから驚いたよ」
「え……それだけで言いあいに?」
もっと込み入った内容かと思っていたから拍子抜けした。同時に違和感を覚えた。克樹さんがそんなことくらいで感情的になるとはどうしても思えないから。
「そう思われても仕方ないな。克樹も相手が僕じゃなかったら、あんな態度は取らなかっただろうからね」
また含みがある言い方だ。
「あの、兄弟仲がそれほどよくないということですか?」
これは聞いていいか迷った。でも話があると呼び出したのは克人さんの方だ。私がこういった質問をするのは予想していたはず。
「うちは家庭環境が複雑なんだ」
思った通り、克人さんはなんの躊躇いもなく答えてくれてくれる。
「克樹から何も聞いてない?」
「はい」
「そうか。あいつは秘密主義だからな。それにあまり表立って言えるような内容でもないんだ。でも羽菜さんは家族になったんだから知っておくべきだと思う……僕と克樹の母親が違うのは知っている?」
「え?……いいえ知りませんでした」
私は内心驚愕していた。
お義母様が後妻で克樹さんと血が繋がっていないのは聞いていた。けれど母親違いの兄弟だったとは考えもしなかった。
そうなると、お義母さまはお義父さまにとって三番目の妻ということ?
「克樹は前妻の子だけど僕は後妻の実子なんだ。父は前妻と結婚する前から母と付き合っていてね、いわゆる不倫関係だったんだ。前妻が亡くなると父の後妻に収まった。だから僕と克樹は兄弟と言っても溝があるんだよ」
私は突然入って来た複雑な情報に困惑しながらも、今聞いた内容を頭の中で整理する。
ええとつまり、お義父様の最初の妻の実子が克樹さんで、長年の不倫相手の実子が克人さんだってことだよね?
自分の母親が亡くなって悲しんでいるときに、父親が知らない女性と年上の子供を連れてくる状況を自分に置き換えて想像してみた。私だったら混乱するし父に文句を言うと思う。
ああ……克人さんとの間がぎくしゃくしているのは無理もない。
克人さんに罪がある訳ではないけれど、それでも当時子供だった克樹さんには受け入れられないだろう。
その後時間をかけて蟠りが解けていく場合もあるだろうが、克樹さんたちの場合はそういったことはなく今に至ったということか。
複雑な環境というのが分かった。
「そのような前提だから、些細なきっかけで大きな揉め事に発展してしまうんだ……克樹はまだ僕が許せないみたいだからね」
克人さんの表情に影ができる。彼は克樹さんとの関係を改善したいと考えているのかもしれない。
「そろそろ卑屈になるところを直してほしいんだけどな」
克人さんがため息交じりに言う。私は思わず眉をひそめた。