無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
「前々院長の考えに賛同している理事が私を支持してくれている。患者第一という姿勢はいつの時代でも大切なことだと思うよ」
木崎院長は無礼な義兄にも冷静に対応している。しかし義兄の態度はますます酷くなるばかりだった。
「はあ……いつまでも祖父に捕らわれているのはやめてもらえませんか? 祖父が開業した当時と状況はまったく変わっているんです。時代も違う。改革を行していかないと大病院だって立ち行かなくなる」
義兄は強い苛立ちを感じているのか、顔を歪めながら発言を続ける。
「そもそも祖父の病院は小さな個人病院じゃないか。同じように考えるのが間違っている」
「克樹先生の言いたいことは分かるが……」
「僕は以前から祖父が気に入らなかったんだ。理想論をかざして赤字になっているのに貧乏人を入院させて支払いを猶予してやったり……偽善者だ」
義兄が忌々しそうに吐き捨てる。その瞬間抑えられない怒りが込み上げた。
「祖父と院長を侮辱するのは辞めろ!」
気づけば立ち上がり義兄を怒鳴りつけていた。
俺の行動に呆気にとられていた義兄は、しばらくすると乾いた笑いを零した。
「はは……なんだ、それがお前の本性か。いきなり怒鳴るなんて下品だな」
「……怒鳴ったのは悪かった。だが義兄さんの院長と祖父に対する発言は度を越えている」
「考え方の違いがあっただけだろう? 本当に合わないな……」
義兄が木崎院長に視線を向けた。
「あなた非協力的な態度は理事会に報告させてもらいます」
それは明確な脅しだと感じた。
病院の運営について強い発言力を持つ理事会の長は、俺たちの父親が勤めている。理事のメンバーは美聖の父親など系列病院で高い地位にいる人物たちだ。
そんな理事会に院長を批難するような報告をするということは……義兄は木崎院長の失脚を望んでいるのかもしれない。
「いい加減にしてくれ! 義兄さんは医師だろう? 金儲けのことばかり考えないでもっと真剣に患者に向き合うべきだ!」
これまでも義兄と対立した医師や看護師が辞めて行った。
そのうち何人かは、義兄に圧力に屈したのだろう。
他人を蹴落とすようなことを繰り返していったい何になるのだろう。
医者になったのなら、医療活動こそが勤めじゃないのか?
俺の訴えが義兄に届いたのかは分からないが、何かを考えているのか沈黙を続けていた義兄がようやく口を開いた。
「院長と克樹とは協力できないとわかった。残念だよ」
義兄は見切りをつけたようにそう言うと、院長室を出て行った。
「克樹先生、大丈夫か?」
こみ上げる怒りをため息と共に吐き出す。
「大丈夫かね?」
木崎院長は兄との諍いを起こした俺を心配してくれているようだ。
「はい。義兄が申し訳ありません」
「いやいいんだよ。過激な物言いは彼もこの病院のことを大切に思っているからだろう。方向性が違うだけだ」
そうだろうか。義兄が一番大切にしているのは昔から自身の名誉と地位だと感じている。
しかし本人がそう表明している訳ではなく、あくまで俺から見た感想だから言葉にはしない。
木崎院長は無礼な義兄にも冷静に対応している。しかし義兄の態度はますます酷くなるばかりだった。
「はあ……いつまでも祖父に捕らわれているのはやめてもらえませんか? 祖父が開業した当時と状況はまったく変わっているんです。時代も違う。改革を行していかないと大病院だって立ち行かなくなる」
義兄は強い苛立ちを感じているのか、顔を歪めながら発言を続ける。
「そもそも祖父の病院は小さな個人病院じゃないか。同じように考えるのが間違っている」
「克樹先生の言いたいことは分かるが……」
「僕は以前から祖父が気に入らなかったんだ。理想論をかざして赤字になっているのに貧乏人を入院させて支払いを猶予してやったり……偽善者だ」
義兄が忌々しそうに吐き捨てる。その瞬間抑えられない怒りが込み上げた。
「祖父と院長を侮辱するのは辞めろ!」
気づけば立ち上がり義兄を怒鳴りつけていた。
俺の行動に呆気にとられていた義兄は、しばらくすると乾いた笑いを零した。
「はは……なんだ、それがお前の本性か。いきなり怒鳴るなんて下品だな」
「……怒鳴ったのは悪かった。だが義兄さんの院長と祖父に対する発言は度を越えている」
「考え方の違いがあっただけだろう? 本当に合わないな……」
義兄が木崎院長に視線を向けた。
「あなた非協力的な態度は理事会に報告させてもらいます」
それは明確な脅しだと感じた。
病院の運営について強い発言力を持つ理事会の長は、俺たちの父親が勤めている。理事のメンバーは美聖の父親など系列病院で高い地位にいる人物たちだ。
そんな理事会に院長を批難するような報告をするということは……義兄は木崎院長の失脚を望んでいるのかもしれない。
「いい加減にしてくれ! 義兄さんは医師だろう? 金儲けのことばかり考えないでもっと真剣に患者に向き合うべきだ!」
これまでも義兄と対立した医師や看護師が辞めて行った。
そのうち何人かは、義兄に圧力に屈したのだろう。
他人を蹴落とすようなことを繰り返していったい何になるのだろう。
医者になったのなら、医療活動こそが勤めじゃないのか?
俺の訴えが義兄に届いたのかは分からないが、何かを考えているのか沈黙を続けていた義兄がようやく口を開いた。
「院長と克樹とは協力できないとわかった。残念だよ」
義兄は見切りをつけたようにそう言うと、院長室を出て行った。
「克樹先生、大丈夫か?」
こみ上げる怒りをため息と共に吐き出す。
「大丈夫かね?」
木崎院長は兄との諍いを起こした俺を心配してくれているようだ。
「はい。義兄が申し訳ありません」
「いやいいんだよ。過激な物言いは彼もこの病院のことを大切に思っているからだろう。方向性が違うだけだ」
そうだろうか。義兄が一番大切にしているのは昔から自身の名誉と地位だと感じている。
しかし本人がそう表明している訳ではなく、あくまで俺から見た感想だから言葉にはしない。