無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
「それに理事長と他数人の理事も克人先生と同じ考え方で君に無理なオペを強いている。意見を申し上げているが聞く耳を持ってもらえなくてね」
木崎先生がため息を吐いた。院長とはいえ父や力がある理事に比べて発言力が劣るのは事実だ。義兄との対立にも疲れを感じているのだろう。
「俺のことは大丈夫です。少しでも多くの患者を救うために医師になったのですから」
それに多忙だが以前よりも心身ともに良好だ。
羽菜が食事に気を遣ってくれているのと、よく休めるようにと言えを心地よく整えてくれているからだと思う。何より彼女が側にいると心が弾み力が湧いてくるのだ。
「患者も職員も大切にする木崎院長のやり方に賛同している職員は多いです。いつも感謝しています」
「そうか……ありがとう」
木崎院長の表情が和らぐ。いつか羽菜が、気持ちを言葉にして伝えるのは相手にとってもうれしいことだと言っていたが、少しは院長を楽にできただろうか。
「先ほどは感情的になってすみませんでした。この場に相応しくない発言でした」
「いやあれは仕方がないよ。それに今思うと克人先生は我々を挑発していたような気もするね。まんまと乗ってしまったが、他に誰もいなかったのが救いだな」
「そうですね」
たしかにあの義兄の態度は、わざと俺を怒らせようとしていたのかもしれない。
義兄の挑発に乗ってしまった自分が情けない。彼に告げた言葉に後悔はないが、感情的になったのは反省しなくてはならない。
重い気持で帰宅すると、羽菜の笑顔に出迎えられてほっとした。
嫌なことが有っても彼女と過ごしていると、気持ちがすっと楽になる。
気持ちを切り替え明日からまた頑張ることができる。
羽菜の手料理を味わい彼女が淹れてくれたお茶を飲み寛いでいると、羽菜が深刻そうな表情を向けてきた。
何か問題が有ったのか? 心配になったが彼女の口から出たのは思いがけない言葉だった。
「克樹さん、克人さんと喧嘩をしたって話を聞いたんだけど』
鼓動がどくんと乱れた。なぜ羽菜がその話を知っているんだ?
「どうしてそれを?』
内心激しく動揺したが、声には出ずに済んだ。
羽菜がどこか気まずそうに話しを続ける。
「ふたりが言い争っている声を聞いた人が話していたのを偶然耳にしたの。克樹さんが克人さんに怒鳴り声を上げていたと言っていたけど本当のことなの?」
かなり詳しく知られている。あのとき誰かが扉の向こうに居たのか?
だが院長室近辺はどこかに移動するために立ち寄る場所ではなく、しかも怒鳴ったときにちょうど居合わせるなんてタイミングがよすぎる。話を広げた大元は義兄自身ではないのか?
どちらにせよ羽菜にまで話が届いているということは、院内でも噂になっているだろう。
感情的になったうえにその後なんの対策も講じなかったのは俺の失態だ。
自分のうかつさに腹が立ち舌打ちをしそうになる。
羽菜には事実だと認めたうえで、心配しないように告げた。
しかし彼女は納得できない様子で詳しい事情を聞きたがる。
どうやら俺の院内での評判を心配してくれているようだ。
その気持ちはありがたいが、義兄との件に巻き込みたくない。兄に暴言を吐かれ彼女が傷ついたらと考えると居ても立っても居られない気持ちになる。
木崎先生がため息を吐いた。院長とはいえ父や力がある理事に比べて発言力が劣るのは事実だ。義兄との対立にも疲れを感じているのだろう。
「俺のことは大丈夫です。少しでも多くの患者を救うために医師になったのですから」
それに多忙だが以前よりも心身ともに良好だ。
羽菜が食事に気を遣ってくれているのと、よく休めるようにと言えを心地よく整えてくれているからだと思う。何より彼女が側にいると心が弾み力が湧いてくるのだ。
「患者も職員も大切にする木崎院長のやり方に賛同している職員は多いです。いつも感謝しています」
「そうか……ありがとう」
木崎院長の表情が和らぐ。いつか羽菜が、気持ちを言葉にして伝えるのは相手にとってもうれしいことだと言っていたが、少しは院長を楽にできただろうか。
「先ほどは感情的になってすみませんでした。この場に相応しくない発言でした」
「いやあれは仕方がないよ。それに今思うと克人先生は我々を挑発していたような気もするね。まんまと乗ってしまったが、他に誰もいなかったのが救いだな」
「そうですね」
たしかにあの義兄の態度は、わざと俺を怒らせようとしていたのかもしれない。
義兄の挑発に乗ってしまった自分が情けない。彼に告げた言葉に後悔はないが、感情的になったのは反省しなくてはならない。
重い気持で帰宅すると、羽菜の笑顔に出迎えられてほっとした。
嫌なことが有っても彼女と過ごしていると、気持ちがすっと楽になる。
気持ちを切り替え明日からまた頑張ることができる。
羽菜の手料理を味わい彼女が淹れてくれたお茶を飲み寛いでいると、羽菜が深刻そうな表情を向けてきた。
何か問題が有ったのか? 心配になったが彼女の口から出たのは思いがけない言葉だった。
「克樹さん、克人さんと喧嘩をしたって話を聞いたんだけど』
鼓動がどくんと乱れた。なぜ羽菜がその話を知っているんだ?
「どうしてそれを?』
内心激しく動揺したが、声には出ずに済んだ。
羽菜がどこか気まずそうに話しを続ける。
「ふたりが言い争っている声を聞いた人が話していたのを偶然耳にしたの。克樹さんが克人さんに怒鳴り声を上げていたと言っていたけど本当のことなの?」
かなり詳しく知られている。あのとき誰かが扉の向こうに居たのか?
だが院長室近辺はどこかに移動するために立ち寄る場所ではなく、しかも怒鳴ったときにちょうど居合わせるなんてタイミングがよすぎる。話を広げた大元は義兄自身ではないのか?
どちらにせよ羽菜にまで話が届いているということは、院内でも噂になっているだろう。
感情的になったうえにその後なんの対策も講じなかったのは俺の失態だ。
自分のうかつさに腹が立ち舌打ちをしそうになる。
羽菜には事実だと認めたうえで、心配しないように告げた。
しかし彼女は納得できない様子で詳しい事情を聞きたがる。
どうやら俺の院内での評判を心配してくれているようだ。
その気持ちはありがたいが、義兄との件に巻き込みたくない。兄に暴言を吐かれ彼女が傷ついたらと考えると居ても立っても居られない気持ちになる。