無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
わざわざ遠くの喫茶店まで来たのは、病院関係者に聞かれたくない話をするからだろう。
これまで義兄から受けた仕打ちが蘇る。
彼は学生の頃も俺の友人や知人に巧妙に近づいては、俺のマイナスイメージを吹き込み孤立させようとした。
義兄の言い分を信じた者。信じなくても面倒な兄弟に関わりたくないと去って行く者が多く、俺も友人を巻き込みたくないと自分から距離多くようになり孤立するようになっていったのだ。
まさか羽菜にも俺から離れるように仕向けているのか?
いくら義兄でも既に俺の妻である羽菜にそこまでするとは思わなかった。
俺と羽菜の結婚は父の希みでもある。義兄は昔から父の意向に逆らわなかった。
もし羽菜が義兄の言葉を信じてしまったら……。
そう考えると堪らない気持になった。ふたりの間に割り込むことなど出来ずにその場を立ち去った。
病院に戻り裏庭に向かった。
旧館の陰で薄暗く少しじめじめしているため人があまり来ない。
年季が入った背もたれのないベンチに腰を下ろしため息を吐く。
あのときふたりの間に割り込み羽菜を連れ出すべきだっただろうか。
だが義兄と羽菜は親族で同僚でもある。ふたりで過ごしていても不思議はないのに、無理やり引き離すような真似をしたら羽菜は俺を身勝手だと軽蔑するだろう。
しかし放っておいても悪い結果が待っているかもしれない。
義兄に関しては全てが後手になり、俺はいつも翻弄されるばかりだ。
そんな状況を変えたいが、そのためには……。
考え込んでいたそのとき、俺の心情とは間反対の明るい声がした。
「克樹、ここに居たんだ」
笑顔で近づいてきたのは白衣を纏った美聖だった。
彼女は断りなく当たり前のように俺の隣に腰を下ろす。
今は彼女の相手をする心の余裕がない。早く去ってほしくて性急に用件を聞いた。
「なにか用か?」
俺の態度はかなり素っ気ないものだが、美聖は慣れているのか平然と微笑む。
「克人と羽菜さんのことで話があるの」
「羽菜の?」
ふたりの名前が並んだことで思わず顔をしかめた俺に、美聖が「そう」と頷いた。
「さっき克人が羽菜さんを誘ってふたりだけで食事に行ったの」
「ああ」
そのことか。大した内容ではないことにほっとする反面、言いつけに来たような美聖の行動に不快感が募る。
「あれ、あまり興味がない?」
「親族になったんだ。食事くらい行くだろう」
「ただの食事ならいいけど……」
美聖が言葉を濁したが、明らかに含みがある。
「ただの食事じゃないと言いたいのか?」
苛立ちながら問うと、美聖が困ったように眉を下げた。
「多分ね。もともと克人って自分が羽菜さんと結婚したかったみたいだし。今でもまだ狙っているんじゃないかな」
不快感が一気にこみ上げる。美聖にくだらないことを言うなと言いたい。しかし義兄は見合いの話が出る前から羽菜を知っていたのは事実だ。
結婚が決まった後の両家の顔合わせでふたりは顔を会わせたが、羽菜も義兄のことを覚えていて「以前お会いしましたね」とにこやかに話しかけていた。
だからと言って半分とはいえ血が繋がった弟の妻に手を出そうとするか?
これまで義兄から受けた仕打ちが蘇る。
彼は学生の頃も俺の友人や知人に巧妙に近づいては、俺のマイナスイメージを吹き込み孤立させようとした。
義兄の言い分を信じた者。信じなくても面倒な兄弟に関わりたくないと去って行く者が多く、俺も友人を巻き込みたくないと自分から距離多くようになり孤立するようになっていったのだ。
まさか羽菜にも俺から離れるように仕向けているのか?
いくら義兄でも既に俺の妻である羽菜にそこまでするとは思わなかった。
俺と羽菜の結婚は父の希みでもある。義兄は昔から父の意向に逆らわなかった。
もし羽菜が義兄の言葉を信じてしまったら……。
そう考えると堪らない気持になった。ふたりの間に割り込むことなど出来ずにその場を立ち去った。
病院に戻り裏庭に向かった。
旧館の陰で薄暗く少しじめじめしているため人があまり来ない。
年季が入った背もたれのないベンチに腰を下ろしため息を吐く。
あのときふたりの間に割り込み羽菜を連れ出すべきだっただろうか。
だが義兄と羽菜は親族で同僚でもある。ふたりで過ごしていても不思議はないのに、無理やり引き離すような真似をしたら羽菜は俺を身勝手だと軽蔑するだろう。
しかし放っておいても悪い結果が待っているかもしれない。
義兄に関しては全てが後手になり、俺はいつも翻弄されるばかりだ。
そんな状況を変えたいが、そのためには……。
考え込んでいたそのとき、俺の心情とは間反対の明るい声がした。
「克樹、ここに居たんだ」
笑顔で近づいてきたのは白衣を纏った美聖だった。
彼女は断りなく当たり前のように俺の隣に腰を下ろす。
今は彼女の相手をする心の余裕がない。早く去ってほしくて性急に用件を聞いた。
「なにか用か?」
俺の態度はかなり素っ気ないものだが、美聖は慣れているのか平然と微笑む。
「克人と羽菜さんのことで話があるの」
「羽菜の?」
ふたりの名前が並んだことで思わず顔をしかめた俺に、美聖が「そう」と頷いた。
「さっき克人が羽菜さんを誘ってふたりだけで食事に行ったの」
「ああ」
そのことか。大した内容ではないことにほっとする反面、言いつけに来たような美聖の行動に不快感が募る。
「あれ、あまり興味がない?」
「親族になったんだ。食事くらい行くだろう」
「ただの食事ならいいけど……」
美聖が言葉を濁したが、明らかに含みがある。
「ただの食事じゃないと言いたいのか?」
苛立ちながら問うと、美聖が困ったように眉を下げた。
「多分ね。もともと克人って自分が羽菜さんと結婚したかったみたいだし。今でもまだ狙っているんじゃないかな」
不快感が一気にこみ上げる。美聖にくだらないことを言うなと言いたい。しかし義兄は見合いの話が出る前から羽菜を知っていたのは事実だ。
結婚が決まった後の両家の顔合わせでふたりは顔を会わせたが、羽菜も義兄のことを覚えていて「以前お会いしましたね」とにこやかに話しかけていた。
だからと言って半分とはいえ血が繋がった弟の妻に手を出そうとするか?