無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
「克人って野心家でしょう? 羽菜さんの実家の笹岡家の財産と人脈がほしいみたい。克樹との結婚が決まったとき、どうして俺じゃだめなんだって激怒してたもの」
何がおかしいのか美聖がくすりと笑う。
「今頃一生懸命羽菜さんを口説いてるんじゃないかな?」
美聖の言葉と同時に先ほどの深刻なふたりの様子が過る。
まさか……本当に兄は。
羽菜は簡単に応じて夫を裏切るような女性じゃないと分かっている。しかし義兄が羽菜を狙っていると考えるだけで不快で仕方がない。
俺を揺さぶるように美聖が言葉を続ける。
「私も羽菜さんは克人みたいな世渡り上手で一見優しい人の方が似あうと思う。ふたりとも経営者タイプだしきっとうまくいくわ」
「……わざわざそんな話をしに来たのか?」
美聖は過干渉で煩わしい面もあるが、俺とは合わないというだけで嫌悪しているわけではなかった。
しかし今では耐えられないほどの拒否感を覚える。
「ううん。言いたいのは克樹は私と一緒になったらどうかってこと」
「は?」
彼女はいったい何を言ってるんだ?
「私の父は克樹と私が結婚することを願っていたの。私もそのつもりだった。でも急に羽菜さんが割り込んできたでしょう?」
「そんな話は聞いたことがない」
「そうなの? 両家では話が上がっていたはずだけど。加賀谷グループを背負う両家が結ばれるのは喜ばしいって盛り上がってたのに知らなかったの?」
仮に事実だとしても、俺にその話がくるとは思えない。
「相手を間違えているんじゃないか?」
美聖が不満そうに口を尖らせた。
「克人はだめよ。私合わないもの。ああいう執念不快タイプは苦手。それに医者としては克樹の方がずっと上でしょう?」
義兄と親しいと思っていた美聖の本音に驚きを感じた。だからと言って共感はしないが。
「そうだとしても俺には関係がない話だ。羽菜と別れるつもりはない」
ストレスが溜まる会話のせいか重い頭痛がする。長時間眠っていないから疲労が溜まっているかもしれない。
無意識に額を押さえたそのときだった。
突然、美聖が勢いよく抱き着いてきた。
油断していた俺は後ろに倒れないようにするので精一杯だ。
「私は諦めない。どんな手を使ってもね。だってずっと克樹と結婚するつもりだったの」
耳元で美聖のほの暗い声がする。
ぞくりと寒気が込み上げた瞬間、美聖を突き飛ばしていた。
「痛い! 何するのよ!」
乱暴に扱われたとことに激怒した美聖が目を吊り上げる。
俺は怒鳴りたくなる気持ちを必死に抑えて、美聖を見据えた。
「不快だから退けただけだ。二度とこんな真似はするな」
「不快って……失礼じゃない?」
「無神経なのはどっちだ? 昔からの知り合いだからと言ってラインを超えるな。今後俺と羽菜に近づくのも許さない」
冷ややかに言い放ち立ち上がる。
「な、なんで……今日の克樹はどこかおかしいよ」
美聖が震える声で言う。これまでの俺は義兄の嫌みにも美聖の過干渉にも文句ひとつ言わなかった。
彼女にとってはいきなり豹変したように映るのだろう。
羽菜と出会う前の俺ならこんな状況でも、無言で流したかもしれない。
何がおかしいのか美聖がくすりと笑う。
「今頃一生懸命羽菜さんを口説いてるんじゃないかな?」
美聖の言葉と同時に先ほどの深刻なふたりの様子が過る。
まさか……本当に兄は。
羽菜は簡単に応じて夫を裏切るような女性じゃないと分かっている。しかし義兄が羽菜を狙っていると考えるだけで不快で仕方がない。
俺を揺さぶるように美聖が言葉を続ける。
「私も羽菜さんは克人みたいな世渡り上手で一見優しい人の方が似あうと思う。ふたりとも経営者タイプだしきっとうまくいくわ」
「……わざわざそんな話をしに来たのか?」
美聖は過干渉で煩わしい面もあるが、俺とは合わないというだけで嫌悪しているわけではなかった。
しかし今では耐えられないほどの拒否感を覚える。
「ううん。言いたいのは克樹は私と一緒になったらどうかってこと」
「は?」
彼女はいったい何を言ってるんだ?
「私の父は克樹と私が結婚することを願っていたの。私もそのつもりだった。でも急に羽菜さんが割り込んできたでしょう?」
「そんな話は聞いたことがない」
「そうなの? 両家では話が上がっていたはずだけど。加賀谷グループを背負う両家が結ばれるのは喜ばしいって盛り上がってたのに知らなかったの?」
仮に事実だとしても、俺にその話がくるとは思えない。
「相手を間違えているんじゃないか?」
美聖が不満そうに口を尖らせた。
「克人はだめよ。私合わないもの。ああいう執念不快タイプは苦手。それに医者としては克樹の方がずっと上でしょう?」
義兄と親しいと思っていた美聖の本音に驚きを感じた。だからと言って共感はしないが。
「そうだとしても俺には関係がない話だ。羽菜と別れるつもりはない」
ストレスが溜まる会話のせいか重い頭痛がする。長時間眠っていないから疲労が溜まっているかもしれない。
無意識に額を押さえたそのときだった。
突然、美聖が勢いよく抱き着いてきた。
油断していた俺は後ろに倒れないようにするので精一杯だ。
「私は諦めない。どんな手を使ってもね。だってずっと克樹と結婚するつもりだったの」
耳元で美聖のほの暗い声がする。
ぞくりと寒気が込み上げた瞬間、美聖を突き飛ばしていた。
「痛い! 何するのよ!」
乱暴に扱われたとことに激怒した美聖が目を吊り上げる。
俺は怒鳴りたくなる気持ちを必死に抑えて、美聖を見据えた。
「不快だから退けただけだ。二度とこんな真似はするな」
「不快って……失礼じゃない?」
「無神経なのはどっちだ? 昔からの知り合いだからと言ってラインを超えるな。今後俺と羽菜に近づくのも許さない」
冷ややかに言い放ち立ち上がる。
「な、なんで……今日の克樹はどこかおかしいよ」
美聖が震える声で言う。これまでの俺は義兄の嫌みにも美聖の過干渉にも文句ひとつ言わなかった。
彼女にとってはいきなり豹変したように映るのだろう。
羽菜と出会う前の俺ならこんな状況でも、無言で流したかもしれない。