無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
けれどもう、羽菜以外には触れられなくない。彼女を蔑ろにしようとする存在を許すことができない。
「これ以上俺たち夫婦になにかするようなら反撃されることを覚悟しろ」
美聖を冷たく睨んでから踵を返す。
「待って、克樹!」
追い縋る声にも振り返らなかった。
仕事を終えて帰宅すると羽菜に出迎えられた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
いつも通りの挨拶だが気まずさが漂っている。
羽菜は義兄の話を聞いてどう思ったのだろう。義兄は加賀谷家の事情をどこまで話したのだろうか。
どちらにせよ羽菜と話し合いをしなくてはならない。
「羽菜、話があるんだ」
「えっ?」
俺の言葉に羽菜は大げさなくらい驚く様子をみせた。
「先日話した、義兄との関係についてだ」
羽菜は神妙な面持ちで頷いた。
「分かった。でも紫前さんのオペが終わってからにしよう。その方が落ち着いて話せるから」
「……ああ、そうだな」
気持ちは急くが羽菜の言う通りだ。
オペは集中して全力を尽くさなくてはならないし、話し合は時間をかけたい。
羽菜も仕事が忙しく疲れているのだろう。あまり顔色がよくない。
「だがこれだけは先に言わせてくれ。この前はきつい言い方をして悪かった。俺の家族の関係を心配してくれたのに事情も話さずに否定した」
「あ……」
俺が謝るとは予想していなかったのか、羽菜が大きな戸惑いを見せる。
「羽菜に対して不満を持ったわけじゃないんだ。羽菜にみっともない面を見せたくなかった。見栄を張ってしまったんだ。本当に悪かった」
「……克樹さん、怒ってたんじゃないの? ずっと難しい顔をしてたし」
羽菜の言葉に今度は俺が驚いた。
「まさか。羽菜にどうやって謝ろうかずっと考えていたんだ」
「そうなの?」
「ああ」
羽菜の表情が驚きからほっとしたような笑顔に変化していく。
「よかった。私が無神経なことを言ったから克樹さんに嫌われたのかと思った」
「嫌い? まさか! 俺が羽菜を嫌うことなんて絶対にない」
夫婦として家族としての優しさを教えてくれたのは羽菜だ。大切でこの先も一生共にいたいと願うのは彼女しかいない。
心から愛しているのだから。
「ふふ……よかった。ほっとした」
羽菜が輝くような笑顔になる。
その顔を見ていると、昼間感じた不安なんて霧が晴れるように消えていく。
「克樹さん、疲れてお腹が空いたでしょう? 今日は好きなクリームシチューをつくったから」
羽菜が俺の腕を掴んでリビングに促す。
忘れていたが玄関で立ったままだった。
それにしてもクリームシチューが好きだということまで知られている。
羽菜はなんでもお見通しなんだな。
キッチンから美味しそうな匂いが漂ってくる。
そのとき、泣きたくなるほどの幸せを感じた。
羽菜を、彼女が笑顔で迎えてくれるこのときが愛おしくて仕方ない。
失いたくない。絶対に守りたい。
そう心から思ったのだ。
「これ以上俺たち夫婦になにかするようなら反撃されることを覚悟しろ」
美聖を冷たく睨んでから踵を返す。
「待って、克樹!」
追い縋る声にも振り返らなかった。
仕事を終えて帰宅すると羽菜に出迎えられた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
いつも通りの挨拶だが気まずさが漂っている。
羽菜は義兄の話を聞いてどう思ったのだろう。義兄は加賀谷家の事情をどこまで話したのだろうか。
どちらにせよ羽菜と話し合いをしなくてはならない。
「羽菜、話があるんだ」
「えっ?」
俺の言葉に羽菜は大げさなくらい驚く様子をみせた。
「先日話した、義兄との関係についてだ」
羽菜は神妙な面持ちで頷いた。
「分かった。でも紫前さんのオペが終わってからにしよう。その方が落ち着いて話せるから」
「……ああ、そうだな」
気持ちは急くが羽菜の言う通りだ。
オペは集中して全力を尽くさなくてはならないし、話し合は時間をかけたい。
羽菜も仕事が忙しく疲れているのだろう。あまり顔色がよくない。
「だがこれだけは先に言わせてくれ。この前はきつい言い方をして悪かった。俺の家族の関係を心配してくれたのに事情も話さずに否定した」
「あ……」
俺が謝るとは予想していなかったのか、羽菜が大きな戸惑いを見せる。
「羽菜に対して不満を持ったわけじゃないんだ。羽菜にみっともない面を見せたくなかった。見栄を張ってしまったんだ。本当に悪かった」
「……克樹さん、怒ってたんじゃないの? ずっと難しい顔をしてたし」
羽菜の言葉に今度は俺が驚いた。
「まさか。羽菜にどうやって謝ろうかずっと考えていたんだ」
「そうなの?」
「ああ」
羽菜の表情が驚きからほっとしたような笑顔に変化していく。
「よかった。私が無神経なことを言ったから克樹さんに嫌われたのかと思った」
「嫌い? まさか! 俺が羽菜を嫌うことなんて絶対にない」
夫婦として家族としての優しさを教えてくれたのは羽菜だ。大切でこの先も一生共にいたいと願うのは彼女しかいない。
心から愛しているのだから。
「ふふ……よかった。ほっとした」
羽菜が輝くような笑顔になる。
その顔を見ていると、昼間感じた不安なんて霧が晴れるように消えていく。
「克樹さん、疲れてお腹が空いたでしょう? 今日は好きなクリームシチューをつくったから」
羽菜が俺の腕を掴んでリビングに促す。
忘れていたが玄関で立ったままだった。
それにしてもクリームシチューが好きだということまで知られている。
羽菜はなんでもお見通しなんだな。
キッチンから美味しそうな匂いが漂ってくる。
そのとき、泣きたくなるほどの幸せを感じた。
羽菜を、彼女が笑顔で迎えてくれるこのときが愛おしくて仕方ない。
失いたくない。絶対に守りたい。
そう心から思ったのだ。