無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
ところが出勤すると、院内の様子がいつもと違ことに気が付いた。
やけに慌ただしくて、いつも朝は自席にいる企画課長の姿も見えないのだ。
他の職員の姿も見えない。始業まで二十分あるからまだ出勤していないのかもしれないけれど、これほどがらんとしているのは珍しい。
戸惑いながら席に座ると、中村さんがやってきた。
「おはよう羽菜さん。様子が変だけどなにかあった?」
彼女も異変を感じたようで、不審そうな表情だ。
「おはようございます。それが私も今来たばかりで分からなくて」
後から出勤した職員も同じように戸惑っている。
それから十五分ほどすると課長がやって来てようやく説明をされた。
「今日の早朝に紫前氏がうちに入院すると情報が拡散されたみたいなんだ。もう代表電話に問い合わせが殺到している」
「え……紫前さんが好評したんですか? あれだけの有名人なんだから騒ぎになるのが分からなかったのかな?」
中村さんが驚きの声を上げる。
「違う。本人も驚いているくらいだそうだ。それで予定していた入院日をずらして今日から特別室に入ることになる」
「入院してこれ以上の情報を遮断した方が騒ぎにならないからですね」
私の言葉に課長が頷いた。
「そういうわけで我々も対応に慌ただしくなる。個人からの問い合わせは代表受付で対応するが、マスコミ対応はうちでする。方針は出しておいたので各自確認しておいてくれ」
「はい」
課長の話が終わり自席に戻る。
「大変なことになったわね。紫前さんは下手なタレントよりも人気があって過激なファンもいるいたいだし、他の患者さんに迷惑がかからないといいけど」
中村さんが憂鬱そうに眉をひそめる。
「本当ですね。これ以上騒ぎが大きくならないように私たちも頑張りましょう」
「そうよね」
私は早速マスコミからの問い合わせメールに返信をするため、文章を作り始める。
克樹さんは大丈夫だろうか。執刀医の彼は一番注目を浴びるはずだ。ただでさえ克人さんとの一件で心を痛めているのに、ますます心労が増えるだろう。心配でたまらない。
私はメールを送信するとため息を吐いた。