図書館の逢瀬


 男性の表情を見てハッとする。


 (わ、私ってば初対面の相手にとっても失礼なことを言っちゃったかも……!いきなりこんなこと言われても迷惑だよね……。少し考えればわかる事だったのに。)



 「す、すみません!いきなりこんなこと言ってしまって。迷惑でしたよね。ごめんなさい。」


 「待って!」


 頭を下げて、男性から逃げようとすると手を掴まれた。


 私よりも一回り、二回りも、大きくて温かい手。


 すぐに振りほどけてしまう程、優しく掴まれていることに、男性の優しさを感じる。



 「実は俺も君の感想を聞きたいと思ったんだ。つまらなくても、面白くても、どんな感想でも聞きたい。」



 男性はさっきの疲れた顔から一変し、優しく微笑んで穏やかな声で告げた。



 「そうだな。土曜日の……時間は、今日と同じ15時で大丈夫かな?」


 「……っ!はい!大丈夫です……!」


 「じゃあ、また来週この時間に。」


 「はい!また来週に!」



 小さな約束に私の心はほっこりした気持ちになった。


 本を読むのも来週また会えるのも楽しみだ。


 さっきは突然の雨に苛立っていたが、今では突然の雨も悪くないと思えた。


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