図書館の逢瀬

 「ありがとう。でも、実はこの本を読んだことあるんだ。君がまだ読んでいないのなら、面白いから是非、君に読んでもらいたい。」



 そこまで言われて断る理由はなかった。



 「あ、ありがとうございます……!」



 本を両手で丁寧に受け取る。



 このまま別れても良かったが、せっかくできた縁をここで終わらせるのもなんだか勿体ない。


 それに、この人ともっとお話がしたいと思った。


 私は勇気を振り絞り口を開く。



 「あ、あの!来週もここに来ますか?えっと、へ、変な意味じゃなくて……!せっかくこうして会えたので、この本の感想とか語り合えたらなって思って……!」


 緊張で声は震えたし、顔もきっと赤くなっているだろう。


 それでも思い切って伝えて男性の顔を見やると、男性は驚いた表情を浮かべていた。

< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop