成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
側にいたい
「オンラインショップのオープンまで、あとひと踏ん張りですね。真理子さんの方はどうですか?」
卓也が隣で肩を回しながら、真理子の画面を覗き込む。
「うん。こっちも最終のチェック段階かな。今、ダミーの顧客データで、サイトから社内システムに問題なく取り込めるか確認中」
真理子はパソコンの画面を見つめたまま声を出す。
「それにしても、このダミーの顧客データすごい量ですね」
「まあね。それぐらい、いっぱいお客さんが増えても対応できるように『念には念を』って、成瀬課長が言ってたんだよね」
「へえ……。そういえば明後日、サイトの最終段階を社長に見てもらうんですよね?」
「そう。社長が全体の打ち合わせに入るって聞いたよ」
話をしながら真理子はふと、社長の爽やかな笑顔を思い出していた。
――あの笑顔、どっかで見たことあるんだよねぇ。どこだっけ……?
真理子は何度か首を傾げるが、記憶がぐるぐると巡るだけで、何も思い出せなかった。
オンラインショップの作成は順調に進み、残すは社長の最終確認のみとなっている。
サイトがオープンして軌道に乗れば、新チームも解散となるだろう。
――会社で、柊馬さんと話す機会は減っちゃうな。
少し寂しく思いつつも、真理子の心は穏やかだった。
お祭りの日以降、真理子は成瀬の事を名前で呼ぶようになり、今まで以上に距離が縮まった気がする。
相変わらず、会社での成瀬の態度は“クール王子”そのものだったが、家政婦でマンションに行けば笑顔で迎え入れてくれた。
ちょっと乱暴で強引な成瀬の物言いも、愛情表現なのではないかと勘違いしてしまう程だ。
「真理子さん! データの取り込み、終わってますよ」
卓也に肩をつつかれ、真理子ははっと顔を上げる。
「ごめん。ぼんやりしてた」
仕事以外の事で思いふけっていたなんて、卓也に知られたら大変だ。
真理子は慌てて姿勢を正す。
「真理子さん、ここ最近根詰めてたし、疲れてるんじゃないですか? ほら、目の下にクマが……」
卓也が手を伸ばし、真理子の目元をそっと指で触れる。
「ちょ、ちょっと。卓也くん!」
真理子は顔を赤くすると、慌てて卓也の手を払いのけた。
「確かに、ちょっと目眩がする時があるけど……」
真理子は引き出しから鏡を取り出すと、自分の目元を確認して愕然とする。
「ほ、本当だ……クマになってる……」
今の真理子は、本業の仕事と家政婦業のダブルワーク状態だ。
自分でも気がつかない内に、疲労がたまっていたのかも知れない。
――こんな顔で、柊馬さんに接近されたら恥ずかしいな。帰ったらパックでもしてみよう。
真理子が一人で悶々と考えていると、卓也が「あれ?」と声を出した。
「どうしたの?」
「いや。成瀬課長が、こっち見てたみたいなんですけど……」
「え!? 成瀬課長!?」
真理子は慌ててフロアの奥を見回したが、成瀬の姿は見えなくなっていた。
卓也が隣で肩を回しながら、真理子の画面を覗き込む。
「うん。こっちも最終のチェック段階かな。今、ダミーの顧客データで、サイトから社内システムに問題なく取り込めるか確認中」
真理子はパソコンの画面を見つめたまま声を出す。
「それにしても、このダミーの顧客データすごい量ですね」
「まあね。それぐらい、いっぱいお客さんが増えても対応できるように『念には念を』って、成瀬課長が言ってたんだよね」
「へえ……。そういえば明後日、サイトの最終段階を社長に見てもらうんですよね?」
「そう。社長が全体の打ち合わせに入るって聞いたよ」
話をしながら真理子はふと、社長の爽やかな笑顔を思い出していた。
――あの笑顔、どっかで見たことあるんだよねぇ。どこだっけ……?
真理子は何度か首を傾げるが、記憶がぐるぐると巡るだけで、何も思い出せなかった。
オンラインショップの作成は順調に進み、残すは社長の最終確認のみとなっている。
サイトがオープンして軌道に乗れば、新チームも解散となるだろう。
――会社で、柊馬さんと話す機会は減っちゃうな。
少し寂しく思いつつも、真理子の心は穏やかだった。
お祭りの日以降、真理子は成瀬の事を名前で呼ぶようになり、今まで以上に距離が縮まった気がする。
相変わらず、会社での成瀬の態度は“クール王子”そのものだったが、家政婦でマンションに行けば笑顔で迎え入れてくれた。
ちょっと乱暴で強引な成瀬の物言いも、愛情表現なのではないかと勘違いしてしまう程だ。
「真理子さん! データの取り込み、終わってますよ」
卓也に肩をつつかれ、真理子ははっと顔を上げる。
「ごめん。ぼんやりしてた」
仕事以外の事で思いふけっていたなんて、卓也に知られたら大変だ。
真理子は慌てて姿勢を正す。
「真理子さん、ここ最近根詰めてたし、疲れてるんじゃないですか? ほら、目の下にクマが……」
卓也が手を伸ばし、真理子の目元をそっと指で触れる。
「ちょ、ちょっと。卓也くん!」
真理子は顔を赤くすると、慌てて卓也の手を払いのけた。
「確かに、ちょっと目眩がする時があるけど……」
真理子は引き出しから鏡を取り出すと、自分の目元を確認して愕然とする。
「ほ、本当だ……クマになってる……」
今の真理子は、本業の仕事と家政婦業のダブルワーク状態だ。
自分でも気がつかない内に、疲労がたまっていたのかも知れない。
――こんな顔で、柊馬さんに接近されたら恥ずかしいな。帰ったらパックでもしてみよう。
真理子が一人で悶々と考えていると、卓也が「あれ?」と声を出した。
「どうしたの?」
「いや。成瀬課長が、こっち見てたみたいなんですけど……」
「え!? 成瀬課長!?」
真理子は慌ててフロアの奥を見回したが、成瀬の姿は見えなくなっていた。