成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
戸惑う心
帰りの車の中、真理子は後部座席で眠る乃菜の顔を覗き込む。
あんな事があった後だが、乃菜は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「まさか橋本が、あそこまで俺に恨みを持っていたとはな……」
成瀬はハンドルを握る手にぐっと力を入れる。
「柊馬さんを恨むのは、お門違いですよ。私ですら知ってるほど、橋本部長のセクハラは有名でしたもん……」
真理子も憤りを隠せずに、語気が強くなる。
「そういえば……専務が言ってたって、話してましたよね?」
真理子は、はっとすると成瀬の顔を振り返った。
「あぁ……」
成瀬はため息をつくようにそう言うと、窓に肘をかけながら、こめかみに手を当てる。
「この前の社長と専務の一件もそうですけど、私たちの知らないところで、会社はもめてるんでしょうか?」
真理子は不安そうな声を出した。
「みんな会社を良くしたいと思ってる。ただ、向いている方向がほんの少し違うだけ……そう、思いたいけどな」
成瀬はそう言うと、赤信号で停車した車のハンドルから手を離し、真理子の手にそっと触れる。
「巻き込んで、悪かったな……」
真理子は、成瀬の指先から伝わる熱に、鼓動が加速するように早くなった。
「柊馬さんは、何も悪くありません! あんな勘違い野郎、蹴散らしてやりましょう」
真理子は照れ隠しするように、反対の手で拳を握り、前にぐっと突き出した。
成瀬は一瞬、目を丸くして真理子を見つめていたが、くくっと声を漏らすように笑い声をあげる。
「本当に……真理子といると、元気が出るよ」
前を向いて、またハンドルを握る成瀬の大きな手を見つめながら、真理子は成瀬に触れられたところが、じんじんと熱くなるのを感じていた。
車は夜遅くにマンションに到着した。
真理子は乃菜を、抱きかかえて車から降ろす。
「すまん。一件、電話してから上がるから」
成瀬は真理子に声をかけると、足早にエントランス奥のソファが並ぶ、共用スペースに消えていった。
「乃菜ちゃんのパパに、報告するのかな……」
真理子は、乃菜を抱きかかえる手にぐっと力を込めると、エレベーターに乗り込んだ。
部屋に着くと、そのまま乃菜をベッドへと連れて行く。
上着を脱がせそっと横にさせると、乃菜がうっすらと目を開けた。
「ごめんね。起こしちゃったかな」
真理子が顔を覗き込むと、乃菜は首を振りながら真理子の手をぎゅっと握る。
「まりこちゃん。おててつないでて……」
乃菜は小さくそう言うと、またすうっと眠りに落ちた。
「よっぽど怖かったんだね。安心して。ずっと側にいるよ」
真理子はそう乃菜の耳元でささやくと、小さな手を包みこむように握る。
その内にだんだんと瞼が重くなり、ベッドに伏せるように眠ってしまった。
あんな事があった後だが、乃菜は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「まさか橋本が、あそこまで俺に恨みを持っていたとはな……」
成瀬はハンドルを握る手にぐっと力を入れる。
「柊馬さんを恨むのは、お門違いですよ。私ですら知ってるほど、橋本部長のセクハラは有名でしたもん……」
真理子も憤りを隠せずに、語気が強くなる。
「そういえば……専務が言ってたって、話してましたよね?」
真理子は、はっとすると成瀬の顔を振り返った。
「あぁ……」
成瀬はため息をつくようにそう言うと、窓に肘をかけながら、こめかみに手を当てる。
「この前の社長と専務の一件もそうですけど、私たちの知らないところで、会社はもめてるんでしょうか?」
真理子は不安そうな声を出した。
「みんな会社を良くしたいと思ってる。ただ、向いている方向がほんの少し違うだけ……そう、思いたいけどな」
成瀬はそう言うと、赤信号で停車した車のハンドルから手を離し、真理子の手にそっと触れる。
「巻き込んで、悪かったな……」
真理子は、成瀬の指先から伝わる熱に、鼓動が加速するように早くなった。
「柊馬さんは、何も悪くありません! あんな勘違い野郎、蹴散らしてやりましょう」
真理子は照れ隠しするように、反対の手で拳を握り、前にぐっと突き出した。
成瀬は一瞬、目を丸くして真理子を見つめていたが、くくっと声を漏らすように笑い声をあげる。
「本当に……真理子といると、元気が出るよ」
前を向いて、またハンドルを握る成瀬の大きな手を見つめながら、真理子は成瀬に触れられたところが、じんじんと熱くなるのを感じていた。
車は夜遅くにマンションに到着した。
真理子は乃菜を、抱きかかえて車から降ろす。
「すまん。一件、電話してから上がるから」
成瀬は真理子に声をかけると、足早にエントランス奥のソファが並ぶ、共用スペースに消えていった。
「乃菜ちゃんのパパに、報告するのかな……」
真理子は、乃菜を抱きかかえる手にぐっと力を込めると、エレベーターに乗り込んだ。
部屋に着くと、そのまま乃菜をベッドへと連れて行く。
上着を脱がせそっと横にさせると、乃菜がうっすらと目を開けた。
「ごめんね。起こしちゃったかな」
真理子が顔を覗き込むと、乃菜は首を振りながら真理子の手をぎゅっと握る。
「まりこちゃん。おててつないでて……」
乃菜は小さくそう言うと、またすうっと眠りに落ちた。
「よっぽど怖かったんだね。安心して。ずっと側にいるよ」
真理子はそう乃菜の耳元でささやくと、小さな手を包みこむように握る。
その内にだんだんと瞼が重くなり、ベッドに伏せるように眠ってしまった。