成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
真理子がふと見上げると、社長の瞳には今にも溢れそうなほどの涙が溜まっていた。
しばらくして、静まり返っていたフロア内に、ぽつぽつと拍手が聞こえだした。
そしてそれは、さっきよりも大きな拍手となって真理子たちを包み込んだ。
「よかった……」
真理子はホッとした声を出し、隣の成瀬と社長の顔を見上げた。
二人とも、ほほ笑みながら真理子を見つめている。
「さぁさぁ。みんな、業務に戻ろう……」
すると常務が手を叩きながら声を出し、真理子もゆっくりと立ち上がった。
ふと常務の顔を振り返ると、その頬には涙のすじがいくつも重なって見えていた。
◆
バンっと専務室の扉が大きく開かれた。
「あいつら! この私に盾突きおって」
専務は足を鳴らしながら部屋に入ると、デスクの上にビラの束を叩きつける。
「おやおや。荒れてらっしゃいますねぇ」
いやらしい目を向けながらそう言ったのは、橋本だった。
橋本は、専務室のソファに深く腰掛けると、膝に手をついて上目遣いで専務を見上げる。
「思惑が外れましたねぇ。まさか、あんな下っ端社員に噛みつかれるとは……」
嫌味ったらしく肩を揺らす橋本に、専務は「ふん」と鼻を鳴らした。
そして、ジロリと鋭い視線を送る。
「お前が持ち込んだこの写真で、徐々に追い詰めようと思っていたが、手間が省けただけの話だ」
「と、言いますと?」
「子供の存在を知り、お涙頂戴で社長側につく奴もいるだろう。だが必ず、不満は募る。その綻びを突けばいいだけだ。あの若造……いつか必ず蹴落としてくれる」
専務は手のひらに拳を突き立てた。
「おぉ。専務に睨まれたら、ひとたまりもありませんねぇ。それにしても元々、社長の椅子は専務に約束されたものでしたのに」
専務は、橋本の言葉に顔を背けると、ドカッと椅子に腰を下ろした。
「まぁいいさ。次の手は考えてある……。お前にも、また動いてもらうぞ」
「なんなりと……」
腕を組みながら横目で目をやる専務に、橋本はにやついた顔でうなずいた。
しばらくして、静まり返っていたフロア内に、ぽつぽつと拍手が聞こえだした。
そしてそれは、さっきよりも大きな拍手となって真理子たちを包み込んだ。
「よかった……」
真理子はホッとした声を出し、隣の成瀬と社長の顔を見上げた。
二人とも、ほほ笑みながら真理子を見つめている。
「さぁさぁ。みんな、業務に戻ろう……」
すると常務が手を叩きながら声を出し、真理子もゆっくりと立ち上がった。
ふと常務の顔を振り返ると、その頬には涙のすじがいくつも重なって見えていた。
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バンっと専務室の扉が大きく開かれた。
「あいつら! この私に盾突きおって」
専務は足を鳴らしながら部屋に入ると、デスクの上にビラの束を叩きつける。
「おやおや。荒れてらっしゃいますねぇ」
いやらしい目を向けながらそう言ったのは、橋本だった。
橋本は、専務室のソファに深く腰掛けると、膝に手をついて上目遣いで専務を見上げる。
「思惑が外れましたねぇ。まさか、あんな下っ端社員に噛みつかれるとは……」
嫌味ったらしく肩を揺らす橋本に、専務は「ふん」と鼻を鳴らした。
そして、ジロリと鋭い視線を送る。
「お前が持ち込んだこの写真で、徐々に追い詰めようと思っていたが、手間が省けただけの話だ」
「と、言いますと?」
「子供の存在を知り、お涙頂戴で社長側につく奴もいるだろう。だが必ず、不満は募る。その綻びを突けばいいだけだ。あの若造……いつか必ず蹴落としてくれる」
専務は手のひらに拳を突き立てた。
「おぉ。専務に睨まれたら、ひとたまりもありませんねぇ。それにしても元々、社長の椅子は専務に約束されたものでしたのに」
専務は、橋本の言葉に顔を背けると、ドカッと椅子に腰を下ろした。
「まぁいいさ。次の手は考えてある……。お前にも、また動いてもらうぞ」
「なんなりと……」
腕を組みながら横目で目をやる専務に、橋本はにやついた顔でうなずいた。