成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
「え!?」

 真理子は思わず声を上げる。
 WEBサイトで顧客情報が閲覧できる状況なんてあるはずがない。
 何かの間違いではないだろうか。

「男の話によると、新聞社のホームページには、ニュースになりそうな出来事や、取材して欲しい事などの情報を募集するページがあるそうだ。募集内容は、気象写真から内部告発まで、多岐にわたる」
「そこに、うちの情報が書き込まれたという事かい?」

 常務が渋い顔をして声を出した。

「はい。電話の要件は、その取材依頼でした」

 真理子は息をのんで、話の行方を見守る。

「その男は本当に新聞社の人間なのか?」

 社長が眉間に皺を寄せながら、成瀬の顔を覗き込んだ。

「こちらに伝えてきた連絡先等々から考えて、新聞社の人間という事は事実だと思う。問題は、書き込まれた内容が事実かどうか……」

 成瀬が真理子の方へ目線を向けた。

「真理子。実際、こんな事があり得ると思うか?」

 他のメンバーも真理子を見つめる。
 真理子はドギマギとしながら、首を大きく振った。

「サーバーを攻撃されでもしない限り、普通はそんな事はあり得ない話です。その点はこちらでも細心の注意を払って、対策を取ってますし。ただ……」

 真理子はそう言うと、首を傾げて考え込む。

 ――何か、引っかかる。

「どうした?」

 真理子は成瀬の顔を見上げた。

「気になるんです。『WEBサイト上で閲覧可能になっている』っていう言い回し。閲覧可能ってことは、どこかにUPされてて、誰でも見られる状況ってことですよね?」

 真理子はメモ用紙を取り出しペンを走らせる。

「オンラインショップのWEBサーバーには、二つのフォルダがあります。公開フォルダと非公開フォルダです。通常は公開フォルダの内容しか閲覧できません。でも、この公開フォルダに誤ってデータをUPしてしまうと、外部から見られる可能性はあります」
「それは人為的なミスって事かい?」

 常務の言葉に真理子はうなずく。

「はい。情報漏洩事件では、よくあるパターンなんです。間違えて非公開情報を、公開フォルダに保存してしまうってことが。ただ実際に外部からアクセスするには、フォルダのURLを知っている必要があるので、かなり限定的だと思いますが……」
「もしそのミスがあったとして、それはシステム側で、足跡が追えるものなのか?」

 成瀬がこめかみに手を当てながら声を出した。

「はい。データをUPすればログは残るので、調べればすぐにわかると思います」

 会話を聞いていた社長が、大きくうなずいて立ち上がった。

「わかった。では、すぐに調査に取りかかろう。まずは新聞社から連絡があった内容が、事実かどうかを確認する」

 社長はそれぞれの顔を見回した。

「まず、真理子ちゃんは、俺のデスクのパソコンを使って調査を進めて。俺は外出が重なるから、柊馬は真理子ちゃんのサポートを」

 真理子と成瀬が静かにうなずく。
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